考察ガチ勢が選ぶ【おすすめアニメ評価】不滅のあなたへ

U-NEXT


おすすめランク B

こんな人にオススメ ⇒ 泣けるショートストーリーを沢山観たい方

ストーリー 3
構成 3
3
キャラクター 3
総合評価   73

 

あらすじ

この地上に、球、が投げ入れられた。
それは何物へでも変化ができ、死ぬ事もない。
それは苔へ、それは石へ、オオカミへ、そして少年へと変化した。
不死の存在は、刺激を求めて旅に出る。新たなる刺激を求めて……。

 

21年1Q(4月~6月)のアニメ書評、第2弾「不滅のあなたへ」

原作は週刊少年マガジンで連載中です。

漫画は未読ですので、アニメだけを語ります。

アニメだけ! です。

というのも、今回ほぼ酷評なので、漫画ファンは読まない方がいいです。

 

 

まず初めに、どうしても伝えておくべきアニメの特徴をあげます。

 

お涙頂戴です。

 

既に死語かもしれないので「お涙頂戴」を説明しますと、重要かつ愛着を持たせたキャラクターを死亡させる事で観客の涙を誘う作り方、を指します。

元は舞台用語ですが、シナリオを作る世界では全般的に使われます。

これを初めに述べなければならない理由は、嫌う方が多いからです。

また、賛否両論ですらありません。

「こうした読み方もできる」とか「価値観の違い」とかではなく、単純にシナリオのレベルが低いと思っている方が大半です。

そういう人は観なくても良い! とも言いません。

「お涙頂戴」作品だと前提として認識しておくと、いちいちイライラせずに観られる上に、その作り方や構造を研究できるので、利点は多いです。

基本、自身の好きなジャンル以外を視聴する時は、そのジャンルの前提を認識してから観ると有効に時間が使えます。

 

そこまでして観なくていい!?

 

いいえ、NO! そこまでして観る視聴者が居ないと、どんどんストレスフリーの平均的な作品ばかりが横行してしまい、文化の多様性が薄れます。

否定と肯定を同時に創造できる視聴者クオリティが、新たな時代の旗手を作り出す土壌となる……はず!

そんな信念の元、高次な視聴者養成を目的としたブログこそ、ここ「ストーリー研究所」なのです。

 

(`・v・´) ドヤッ!

 

さて、言いたい事は言ったので、面白かった点を挙げていきます。

 

 主人公不在

 

この点も、不満をぶちまけたい方が多そうなポイントですね(笑)

感情移入できない主人公なんか主人公たる資格がない! ってところでしょう。その通り。

ドラマは人なので、人が全てです。

書き手も人であれば、読み手も人。人以外の宇宙人とか神への感情移入は原理的に不可能ですので、主人公にしてはならない……というのが原則。

とはいえ、原則があれば例外もあるという常識も混在します。

 

例外にする場合の通例は、多数のキャラクターとドラマを書きたい場合

 

本作はこの典型です。

実質的に「主人公不在」は無理なので、話の毎に主人公が変わります。

 

1話「一人氷河の村に残された少年」

2話「民族儀式の生贄になる幼女」

3話「顏と人生に障害を抱えた少年」

 

これらを主人公としてドラマが展開され、そして必ず死亡し、同行している宇宙人に取り込まれます。

多数のドラマを作れるのは利点ですが、逆に、多数のドラマを作らなければ成立できないという、相当な根気を強いられているとも言えます。

 

特に本作は、各回のたびに世界観も作り直しているので、根気だけではなく熱量もいる作業ですね。

そこに、真正面から取り組んでいるのは、素晴らしい気構えです。

世界観を作るには道具、住居、衣服、人間関係、政治体系、文化体系、歴史体系と様々な設定を必要とされますし、それに合わせたキャラクターも全てゼロから作りますので、相当な熱がなければやりきれません。

 

これを熟そうとする姿勢と表現に、読者は付いていけるのだと思います

情熱によって生み出された小物や設定を愉む物語、ですね。

(漫画は読んでいませんが、きっとそうだと予想)

 

逆に、アニメはその気概を汲み取れていないのか、予算が足りないのか時間が足りなかったのか、キャラクターの輪郭が塗り潰されているとか、背景塗り潰しとかが目に付いて、残念な仕上がりが多かったです。

 

 

 

 ストック型シナリオ

 

ここも賛否が出そうです。

ストック型、とはビジネスで使われる言葉から転用しています。

ブログやYouTubeなど、一度作ったら終わりではなく、作った物が蓄積されて収益循環させるビジネスモデルです。

 

本作は短編集ですので、都度、設定更新されます。

その前パートを取り込むシステムを採用しています。

神様が死者を自身に取り込むシステムがありますので、亡くなった主要キャラクターは神の中に取り込まれ、いつでも再登場が可能

これを「人類補完計画」という!(実際に作中で述べられている)

 

否定派の意見としては、「そういうの、システム化しなくてもいいから」でしょう。

正直、短編集のシナリオ特性に前話を引き継ぐ機能があるので、システム化する必要性は無いです。

人格が消去されるので、パーティ(仲間)集めにもなっていません。

見た目だけのシステムなので、なぜなぜマン( ゚Д゚)達は首を傾げるのです。

 

この辺りは、構成的に咀嚼できます

 

まず、一人の旅人が世界を回るパターンはよく見かける上に、けっこう単調になります。一話毎にケリがついてしまうので、本を閉じるタイミングが多いのも欠点です。

何か刺激を入れておく必要があります。

 

それがSF要素

 

はい、本作の「不死」はSFと観た方が良いです。

単調になりそうな話に刺激を入れるには「SF」か「ミステリィ」と相場が決まっており、本作はSFですね。

何も無かった物質が、人の感情をストックする事で、人へとなっていく。

物語全体の目的を設定しておき、各話のストーリーとは別にシナリオを並走させておく。

後、ストックした人格の感情は今の所作中に出てこないですが、時期に回収されるでしょう。毎回死後の世界みたいなのが最後に挟まれるので、あれが四次元という事で後々シナリオを返す含みも作ってあります。(あくまで含みなので、使う使わないは作者側で選択できる)

 

強めに述べてしまえば、だから何? 

一般文芸誌ではワンアイディア程度の供え物にすぎないですが、ここはあくまで週刊少年マガジン

 

少年のキャパシティを計算する必要があります。

 

SFマニアで純文学もそれなりに読み、付け焼刃の設定を見させられるよりも人間の葛藤と克服によりシナリオの深みを感じる、そんな年寄りに向けられた作品ではありません

どの程度の人生経験があり、読書量があり、またどのような状況でこれを読み、どのような買わせ方をしたいのか? までを考えるのがターゲット選定です。

少年誌が若手の作家を欲しがるのは、オッサン達ではもうその感覚を再現できないから。

 

むしろ、この若い感覚を許容できないのであれば、そもそも少年誌を読むべきではない

 

頭を空にして読め! ではなく、自分達が十代だった頃にどのような感覚で物語を読んでいたのか? 

その感覚の遡及、追懐、自照こそが最大の楽しみ方なのです。

 

誰に向けて話しているのか分からなくなってきたので、作品に戻します。

 

 

 今後の期待値

 

この手のシナリオの辛いところは、主人公が主導で物語を動かせないという部分。

受け身でしかストーリーが動かないので、話を進める毎に単調になる傾向があります。

んなのは、制作側は作る前から理解している事なので、大きく転換する可能性が高いです。

通常であれば4話目くらいには大風呂敷がないとダレるので、アニメ2期くらいで何か始まると予想しています。

2話目の日本みたいな国の回収も終わっていませんし、先延ばしの必要も無いので、そこを絡めた大規模展開の発生がアニメの2シーズンになるかもしれません。

はたまた、昨今のジャンプに反抗して、短編を続け長編化を図るのか?

漫画を読めば分かるのでしょうが、こういうのは勝手に予想しておいてから読書するとより楽しめますね!

 

とりあえず、最強イケメンは銀髪(漫画ではベタ無し白髪)だ! という流れは今後も続きそうだ! 

それが再確認できただけでも、有意義な時間でした。

 

ーーー 追記 ーーー

今ウィキペディア見ると、女性作家さんなんですね。

であれば、もうちょい大風呂敷は無さそうですね。

細やかな設定と世界観を愉しみましょう。