吸血鬼ハンターD(6)発行:KADOKAWA
おすすめランク A
こんな人におすすめ ⇒ クオリティ重視のアニメが観たい! そんな方は必見。日本クリエイターの魂
ストーリー | 3.5 |
映像 |
5 |
キャラクター |
3.5 |
センス | 5 |
総合評価 80点 |
【あらすじ】
遥か未来、人類は貴族《バンパイア》により支配され、奴隷として扱われていた。
人類はハンターと呼ばれる狩り専門家を雇い、貴族へと反逆する。
中でも最強と謳われるハンターが居た。
「D」。
バンパイアと人間のハーフ「ダンピール」の狩人であった。
「ジャパンアニメーション」を、海外に広めた作品は多くあります。
筆頭は
『 GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊 』(原作 士郎正宗 監督 押井守)
そして、双璧を成す人気を誇っているのがこちら、
『 Vampire Hunter D 』
本作は、まずアメリカで公開されて人気を博し、逆輸入で日本へと入りました。
監督は川尻善昭氏(最近は鬼滅の刃、呪術廻戦の絵コンテされてます)、アニメーションはマッドハウス(CCさくら、カイジ、ブラックラグーン、デスノートなど)
日本アニメのトップクリエイター集団の一角と言えます。
原作小説の作者は菊地秀行氏。
何より特筆すべきは、小説挿し絵、キャラクター原案 天野 喜孝 氏。
ラインナップを見ただけで「絶対格好いい、ハイクオリティ作品やん!」を想像できるのですが、想像は所詮、想像。
我々の想像など遥かに超越した、ハイクオリティアニメーションです。
もう20年以上も前の作品になりますが、今尚色褪せない、超クオリティアニメです。
これを知らないアニメファンは存在しないと思いたいのですが、どうやら多いです。海外評価は依然として高いのですが、日本の知名度は下がる一方……。
なんだかなぁ。
こうした不朽の名作は必ずDVDで所持して、子供に義務教育として見せるべきです!
広告の為ではなく、本気で言っています。
理由もちゃんと述べます。
さて、今回もポイントを絞ります。
point① 天野喜孝氏の絵を最大限に生かす
point② 欧、米、日の良い所取り
point③ 未来設定による広大な世界観
では見て行きましょう。
point① 天野喜孝氏
本作の最大の特徴が、天野先生の絵にあります。
これが無ければ物語、世界観、なにもかも成立しません。
ファイナルファンタジーシリーズでも御馴染みの大御所デザイナーですが、特徴は「圧倒的な美麗」「細い線からの迫力」でしょうか。
一目見れば、忘れる事はできません。
大好きなイラストレーターさんですが、構図がけっこう落ち着いていて、子供の頃はモヤっとしたものがあったのです。
そのモヤっとが解消されたのが、本作。
巨大すぎる満月を背景に、黒馬に乗った黒い騎士が、黒いマントを天へと靡かせる。
物理法則をことごとく無視した、大胆な絵!
中二病患者が努々妄想する格好良い一枚絵!
「こういうのを、待っていた! 天野先生の絵を、こういう風に動かして欲しかった!」
そんな願望がとことんまで表現されていて、アニメーターさん達分かってるわ! と、熱狂する場面が盛り沢山です。
中二病の方は、これだけでも見るべきです。
格好良いがそこら中に詰め込まれた、宝石の様な映像が観られます。
ストーリーよりも何よりも、まずはその美しく大胆な絵を見て欲しいです。
point② 欧、米、日の良い所取り
ストーリーも面白いです。
一つ一つを分解すると普通の事をやっているのですが、合わさると独特の世界観が作られます。
【欧米風】
まず全体には欧米です。
初めに登場する街は、ヨーロッパで良く見る石畳、レンガ造りと中世のそれです。
また敵もバンパイアという、欧米の魔物。
最後の城もゴシック建築の典型的なとんがり塔。
森も深い闇であり、これも欧米風。
そもそもの天野氏の絵、小説の世界観が欧米風なのでこちらが顕著に取り上げられています。
ですが、それだけではないです。
【アメリカ風】
商売敵のライバル(主人公側ヒロインも含める)連中は、あからさまにアメリカ風です。
巨大なトラック、バイクを乗り回し、拳銃を扱う。
性格やノリもアメリカ風というか、マッドマックス風。
道中、荒野をトラックが走る場面も含め、ハリウッド映画で観そうなライバル達です。
【日本風】
そして「D」の使う武器が、刀。
これ、かなり重要です。本作に入ってくる唯一の日本が、ここだけ。
ですが、本作のDのバトルシーンは、ほぼ一撃。
敵を真っ二つにするだけです。
その一撃に格好良さを出しているのですが、これが成立する武器の最適解が「刀」。
また、痩身のDの姿にも合った長刀であり、シャープで華麗な天野先生のスタイルも全面的に絡み合っています。
(セフィロスと言ってはいけない)
たった1要素ですが、これが無くては整理しないほど、絶妙な武器選択でした。
一つ一つはベタなのですが、バランス良く配合されると独特な魅力が出てきます。
ここも本作の良かった点です。
サムネにお借りした漫画版。やっぱり格好いい重視。
point③ オチは、SF
そしてここです。
本作、最初から最後付近まで、ずっと中世ヨーロッパなのですが、最後だけSFです。
というより、粗筋でも述べました「遥か遠い未来」という設定が回収されます。
あまりに中世的な世界観なので観ていて忘れますが、本作は「西暦12,000年」です。
冒頭で何度も宇宙から見た地球の絵が出てきますが、かつてこの世界では惑星間旅行が可能であり、それほどに文明が高度化していました。
そこ自体には映画はあまり触れませんが、その様な背景があるとは知らされます。
そして最後に、バンパイアと、バンパイアを愛した女性は宇宙へと永遠の旅に出る……。
ってオチで、主人公サイドのヒロインが「飛べ! 飛んでくれ!」と叫ぶシーンがあり、まぁ……これ自体はベタなのですが、背景に色々なモノが詰め合わされていますので、分かりやすく広大なSFで幕を閉じるというのも、カタルシスがあって素晴らしかったです。
総じて言えるのですが、こうしたクリエイター色の強い作品は、背景に色々なモノが詰め込まれる傾向にあります。
ですので、台詞や構造を難解にしてしまうと、視聴者がおいてけぼりを喰う可能性が高くなります。
その辺りの塩梅がとても上手で、一つ一つはベタに作られています。
その分、絵にセンスを注ぎこんでいます。
アニメたるもの、まずは絵。
あらゆるカットが美しいです。
日本クリエイター達の才能を、世界中に知らしめた傑作。
私もDVDで持っていますが(あまり配信にならないので)、こういう作品は手元に置いて、いつ何時でも観られるようにしておいて欲しい一作です。ちゃんとお子様の教材にしましょう。
持っておいて損はしない不朽の名作だと思っています。
(日本語版と英語版がありますが、英語版の方が好きです)