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おすすめランク A
こんな人にオススメ ⇒ お笑い、ミステリィ、サスペンスを肩の力を抜いて観たい方
ストーリー | 3 |
構成 | 3.5 |
画 | 3 |
キャラクター | 3 |
総合評価 75点 |
あらすじ
一人の女子高生が、失踪した。
タクシードライバーのオットセイは、そんなよくある事件をラジオで聞いた。
変わり者の運転手のタクシーには、今日も変わり物のお客が乗車する。
変わり者の乗客、その一人が、失踪中の女子高だった。
彼女が記録されたドライブレコーダーを巡り、事件は二転三転と動いていく。
21年1Q(4~6月)で人気を博した作品、「オッドタクシー」。
時の流れが光の速さとなるアラフォーおじさんは最近の話題に疎いので、昨日知りました。
でもサブスクで全部観れたので、ギリギリセーフでしょう。
てゆーか、サスペンスだし、全部終わってから観て良かったです。
本作、主人公がオットセイで、友人が猿とゴリラで、ヒロインがアルパカ……擬人化作品です。
可愛らしい動物が登場人物ですので、それに合わせた作りになっています。
すごく丁寧で、親切です。◀ココ重要
非常に観やすい作り方をされていましたので、ここら辺りをポイントにして見て行きます。
今回は気楽に書くので、気楽に読んでみてください。
サスペンスとミステリーの違い
定義はあって無いような物ですので、自身で自由に決めて下さい。
私のミステリーの定義は、
「作者と読者の謎解きバトル」
サスペンスの定義は
「謎によって物語を動かす作品」
似ているのですが、根本が異なります。
ミステリーは、あくまで「謎解き」がメインですので、どんなトリックを使ったのか? どのようなミスディレクションを使ったのか? どのようにヒントに辿り着いたのか?
それを読者が同じ土俵で考え、また見破る事にカタルシスがあります。
つまり、「全てのヒントを提示していないと、フェアじゃない」。
某有名作家様の言葉を借りますと
読者は今後を予測するのが楽しいのに、それが「偶然に」とか、肩透かしです。
これがミステリィ。偶然とか許さない。
只、そんなパズルを愉しむだけの人ばかりではなく、少し謎解き要素があって、ドラマが引き締まってくれたらOK! って層もあります。(むしろ、こちらの方が多いです)
ミステリィの「謎による引力」を利用して、よりスリリングなドラマで楽しんでもらおう!
これが、サスペンスです。
なので、サスペンスの書評に「〇話の××という言葉は、〇話のこれに掛かっていて」とか、あまり意味ないです。
パズルが目的ではないので、本文に書いてない場合も多いですし、書いてないからって駄作ではありません。
雰囲気が出ていれば、サスペンスはOKです。
目的が違うのです。
本作は、サスペンスに該当します。
主人公の40代おじさんオットセイは、事件に巻き込まれ、巻き込まれていく内に物語が終わります。
特に謎を解決している分けではないので、ミステリィではありません。
ミステリィに見えたのは、なぜ?
ここが巧みで、丁寧と評する部分です。
本作、擬人化という点からも、幅広い層の視聴が可能になっています。
時間帯は深夜でしたが、全然、ゴールデンでも大丈夫でした。
サスペンスの多くは過度な死体や恐怖で煽るので、嫌いな人も多いでしょうが、本作には、それがほぼありません。
家族で観れます。
これを可能にしたのが、ミステリィ要素。
主人公のオッサンの知能指数が極めて高いので、ミステリィ要素が成立します。
賢いオッサンが事件解決するストーリーラインが、ずっと途切れずに存在しています。
もう一度述べますが、本作は「サスペンス」の形式です。
が、ミステリィを広めたい、ミステリィ調で書きたいという想いが詰まっています。
とはいえ、ミステリィマニアの皆様は怖いので、サスペンスの体でミステリィを広める体裁を取っています。
例えば、
謎で使った伏線を、ちゃんと回収していました。
すごく丁寧に伏線を貼り、すごく丁寧に回収されています。
ミステリィはあまり観ない、読んだことが無い子供でも分かるように、ちゃんと説明されています。
小学生くらいでも、ほぼ全ての全容は理解できたはずです。
知らない人へ広めたい。
この精神に溢れた良作でした。
だからこそできた、お笑い
最も目を引いた特徴が、お笑い。
しかも、かなり本気のお笑いです。如何せん、本物の漫才師(ダイアンさん)まで起用して、道中の会話もラジオ調の漫才が繰り広げられます。
台本も入念に作られていて、本格的にフリボケが作られています。主人公達もちゃんと漫才会話をします。
本気でお笑いも詰め込まれています。
これが、本格ミステリィではやり辛いのです。
前述通り、「ミステリィ」は作者VS読者ですので、どこにどう伏線を仕掛けているのかを隠す性質があり、また会話に伏線を仕込む事が多いので、真剣に会話を聞かなくてはいけなくなります。
そうすると、漫才が笑えなくなります。(笑うべきか、伏線を見破るべきか、読者の視点がブレるので)
本作はサスペンスですので、そこに対応可能。
伏線ポイントは、誰にでも理解できるように明確に作られています。
メリハリが付けられていて、「ここはミステリィ」「ここはお笑い」「ここは小説」と、区切られて作られているのが、非常に丁寧で親切設計で、好感が持てました。
小説パート
これも「広めたい」意識が見えます。
13話中、4話と11話(のAパート)が小説風です。風というか、小説の朗読です。
本来の目的は尺の短縮でしょうが、小説でありがちな過去の回想を一気に流す方法を使用されています。
特に4話に関しては、1話丸々朗読でした。
1話丸々これに費やしたのは、視聴者への配慮ですね。省けるシーンが多かったので、その気になれば前半パートでまとめられたはずですが、ちゃんと1話使用されています。
こうした回想は、できる限り本編から独立させなければ非常に観辛いので、尺は伸びますが1話を丸々使い独立させています。
この配慮も、好感です。観やすさを追求しています。
視聴者配慮のされた、丁寧な作品
詰められている要素(笑い、ミステリィ、小説)などをしっかり魅せた上で、ストーリーもスリリングに進み、伏線も回収して、キャラクターも観やすい。
あらゆる角度から配慮が成された作品で、マニアというより、一般層への意識が強く感じられました。
詰まる所、サスペンスとミステリィの違いは、ドラマに仕立てる=広く視聴者配慮をする ですので、作品目的は達成されていますし、門戸も広く、テレビ局主導で作った商業アニメ作品として立派でした。
特に非難する箇所も無いですし、誰でも楽しめる作品だったと思います。
強いて言えば、人物達の悩みが20代向けでしたので、子供向けでは無いですし、50歳↑くらいの層だと緩すぎるかなと。まぁ、全てにおいてバランスを取るのは難しい上に、これ以上やると創造性が欠落しそうなので、これはこれで良い塩梅だったと思います。
かなり広い視聴者を想定していますので、相当な方が面白いと感じる良作だと思いますので、オススメできます。
後、伏線が分かりやすいので、考察とかやってみたい方、サスペンス、ミステリィを作ってみたい方は参考になるはずです。