書店員が本音で選ぶ【おすすめマンガ】おじさまと猫

   おすすめポイント

一人暮らしのおじさまとぶちゃいくな顔をした猫のふくまるが過ごす、優しく温かい日々。

作者の桜井海さんがTwitterでマンガを描いていたところから人気が集まり、『ガンガンpixiv』と『月刊ガンガン』での連載が始まりました。

1~2巻は1話読み切り、もしくは1ページずつの四コマ漫画形式でしたが、月刊誌での連載となった3巻辺りから1話あたりのストーリーが長くなっています。

読むときはティッシュかハンカチ必須。じんわりと心がとあったかくなる優しいお話です。

 

 

 【あらすじ】

お前に出会えたことが幸福だからふくまるだよ

ペットショップで売れ残っていた一匹の成猫。日に日に値段が下げられ、見向きもされず、諦めていた猫の前に一人の男性が現れる。彼が告げた言葉とは…「私が欲しくなったのです」これは誰かに愛されたかった猫とおじさまの、心温まる日々を紡いだ物語。

(公式HPより)

 

胸熱 2
胸キュン 4.5
泣ける 5
笑える 4
売れ行き 4.5

 

作者さんのTwitterからpixivコミックへ、そして月刊誌の連載となった今作品。

1巻発売時から何度も重版がかかり、新刊が出るたびに既刊が根こそぎ売れていくマンガ書店では常に欠品状態です。

「お願い! 版元さんがんばって刷って!」と発注のラブコールを幾度も送るがなかなか実現せず。

2021年にドラマ化され、さらに認知度が広がりました。

 

購買層

20~40代女性。

そのうちの3割は猫と生活を共にしているのではないかと思います。

(わたなべの勝手な推測ですが、猫を飼っている人同士なぜかわかるセンサーがある)

もちろん猫を飼っていない人も楽しめますし、読んだらペットショップにふくまる似の猫がいないか見に行ってしまうこと間違いなし。

Twitterやpixivコミックで読めることもあり若い世代の方が多いように感じます。

 

  読みどころ
 
  1. イケおじ×ぶちゃねこ
  2. 散りばめられたねこあるある
  3. 人と猫、それぞれの孤独

 

①イケおじ×ぶちゃねこ

おじさまに引き取られた「ふくまる」はエキゾチックショートヘアという血統書付きの猫です。

冒頭から「ブサイク」「ハナクソついてる」と言われていますが、ケースには\320,000の値札が付いています。

↓こちらがエキゾチックショートヘア

長毛のペルシャと短毛のアメリカンカールをかけあわせ、さらに鼻が幅広で低いバーミーズとかけ合わせた結果、短毛で鼻の低いエキゾチックショートヘアが生まれました。

穏やかで人懐っこく、ふくまるもおじさまに甘える場面がたくさんあります。

1巻の表紙ではスーツ姿のイケおじがクッションみたいにまるっとしたふくまるを抱いていますが、この組み合わせがもう……可愛すぎる!

表紙のふくまるはキュートな姿ですが、本編ではブサイクな顔、怖い顔、ぽろぽろ涙と鼻水を流す顔など、実際の猫では見ることのできない顔が表情豊かに描かれています。

それを愛でるおじさまを読者が愛でる……!! 

そういうマンガです。

 

おじさまは最愛の奥様と死別したばかり。

一人暮らしをしていたところにふくまるを迎え、少しずつ笑顔を取り戻していきます。

それを登場人物たちが愛で、さらに素敵な笑顔を見せてくれるおじさまを読者が愛でるのです。

イケおじは表紙のおじさま「神田冬樹」以外にもバリエーション豊かに登場し、それぞれが犬や猫と暮らしています。

きっとあなたの「推しおじ」が一人はいるはず!

おじさんではないですが、おじさまの同僚である「森山良春」くんもいいキャラをしています。

素直で真っすぐで夢に向かって突っ走るタイプで、おじさまのイケおじ感がさらに際立ちます。

 

⓶散りばめられた「猫あるある」

猫を飼ってる人はこのマンガを公共の場で読んではいけません。

人がいるにも関わらず、思わず吹き出し、思わず涙し、思わず声を上げ、不審な目で見られること間違いなしです。

それくらいたくさんの「猫あるある」シーンが出てきます。

 

〇猫ハウスではなく、それが納まっていた段ボールに入って出てこない。

〇猫のためを思い、たくさん入れた猫砂を辺り一面にけちらかす。

〇飼い主さんは大好きだけどお風呂は大嫌い。

 →あまりのショックに冷蔵庫と流し台のすき間から出てこない。

 →飼い主が引きずり出そうと手を突っ込んでさらに奥にはまる。

 →あきらめて風呂に入ると知らぬ間にバスマットで寝ている。

〇寝ている飼い主をモミモミする

 →飼い主は嬉しすぎて寝床を譲る。

 →譲りすぎて毎日ベッドの端で寝てしまい、体が痛い。

〇「猫転送装置」を一度は試したことがある。

 ↑猫は紐やテープで円を描くとなぜかそこに座りたくなるのです。

 ちなみに丸でなく、コピー用紙でも可。

〇猫はピアノがきらい。なのに鍵盤の上に寝そべるし椅子は爪とぎにする。

 ピアノが嫌いっていうか飼い主が構ってくれないのがいや。

 なので飼い主が熱いまなざしを注ぐ鍵盤を踏んでいく。

 読んでいる本や新聞紙、ノートパソコンの上を通過していくのも同じ理由。

〇好奇心旺盛で玄関扉から脱走してしまうエピソードは号泣ものでした……

 

作者の桜井海さんがいろんな猫を飼った経験があるようで、挙げだしたらきりがないです。

猫と人間の切ない関係もふくまる視点で描かれていて、泣く飼い主多数。

(↑仕事に行って帰ってくるという、日々の惜別と再会)

猫と暮らしている人には「猫あるある」ですし、未経験の方は疑似体験ができます!

 

③人と猫、それぞれの孤独と優しさ

このマンガでは登場する誰もがいろんな種類の「孤独」を抱えています。
おじさまは立派な一軒家から子供たちが独立し、奥様と穏やかに暮らしていたところ、死別の日を迎えてしまいます。
ふくまるはブリーダーの元で母猫や兄弟猫と一緒に暮らしていたところを切り離され、成猫になるまでペットショップのケースの中で過ごしていました。
ふくまるの兄弟猫が飼い主に見離される場面があったり、おじさまの幼少期の孤独な姿が描かれたり、いつもは元気いっぱいの森山くんの心の影に触れるシーンもあります。
他にも親と分かり合えなかったり、父親に認めてほしい気持ちが強くなりすぎておじさまを憎み、更にはおじさまになりたいと言うピアニストなんかも出てきます。
おじさまとふくまるの優しい日常だけでなく、誰もが当たり前にもっている「ひとりになる寂しさ」誰かと一緒に過ごすことの喜び」が優しいトーンで描かれています。
人同士だと寂しさや辛さをこらえてしまうけれど、家に帰ると猫がいて心を許してしまう
あまりの愛おしさに写真を撮りたくなり、それを職場で見つめて顔がにやけ、「あの人、あんな一面もあるのか」と職場の人と打ち解けたりもする。
しまいには猫グッズを買い集め、「私の猫自慢」をしてしまう。
それぞれの孤独と優しさが、行ったり来たりしながら心を通わせるあったかいお話です。

 

 

まとめ

ちょっと心が疲れた時に手にしてほしいマンガNo.1。

小さな優しさがあなたのそばにあることを

思い出させてくれるマンガです!

 

    書店員 ウラ話
この作品は2021年にドラマ化されました。
書店員はテレビやウェブメディアよりも先に、原作本についた帯や販促物でアニメ化やドラマ化を知ることが多いのですが、その際の猫好き同僚との一場面です。
 
わたなべ
あっ! コミックの帯にドラマ化のお知らせが載ってる!
猫好き同僚
おー! ドラマ化! これは楽しみやなあ
わたなべ
主演は草刈正雄さんでイメージぴったり。ふくまるはどうするんやろ?
猫好き同僚

そっくりな猫を探したのかな?

わたなべ
いや……ちょっと待て。このふくまる、もしやぬいぐるみでは……
猫好き同僚
……ぬいぐるみやな
わたなべ
……どっからどう見てもぬいぐるみやな
猫好き同僚

見るのやめとこか

わたなべ
せやな(泣)
……というわけで……ドラマが好きな方、ごめんなさい!
草刈正雄さんもふくまるの声をあてた神木隆之介くんも大好きなんですけど……
ふくまるがぬいぐるみは、あかん!!
と、これ以上言わないために動画は視聴したものの、ドラマは見ませんでした。
制作された方々、ごめんなさい。
確かに動いていましたが、あれはふくまるではなかったです。
 
ドラマも気になる!という方は、ドラマ→コミックの順に見ることをおすすめします
逆はたぶん辛いです。
 
アニメ化されてふくまるがふくまるらしい姿をしていたら見るかもしれないので、そこはまた今後に期待です!