おすすめランク B
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ストーリー | |
映像 | |
キャラクター | |
西野亮廣 | |
総合評価 75点 |
【あらすじ】信じて、信じて、世界を変えろ。
厚い煙に覆われた“えんとつ町”。煙の向こうに“星”があるなんて誰も想像すらしなかった。一年前、この町でただ一人、紙芝居に託して“星”を語っていたブルーノが突然消えてしまい、人々は海の怪物に食べられてしまったと噂した。ブルーノの息子・ルビッチは、学校を辞めてえんとつ掃除屋として家計を助ける。しかしその後も父の教えを守り“星”を信じ続けていたルビッチは町のみんなに嘘つきと後ろ指をさされ、ひとりぼっちになってしまう。そしてハロウィンの夜、彼の前に奇跡が起きた。ゴミから生まれたゴミ人間・プペルが現れ、のけもの同士、二人は友達となる。そんなある日、巨大なゴミの怪物が海から浮かび上がる。それは父の紙芝居に出てきた、閉ざされたこの世界には存在しないはずの“船”だった。父の話に確信を得たルビッチは、プペルと「星を見つけに行こう」と決意する。しかしこの町の治安を守る異端審問官が二人の計画を阻止するために立ちはだかる。それでも父を信じて、互いを信じあって飛び出した二人が、大冒険の先に見た、えんとつ町に隠された驚きの秘密とは?
(「公式」より)
色々と述べる前に一言、
「映画館で見て欲しいです」
観客があまりに少ないと感じました。本作に限らず、鬼滅でも十分の一も席が埋まっていなかったです。(21年1月時点)
時期が時期ですので仕方が無いのでしょうが、映画は基本的に「映画館で鑑賞する」事を想定して作られていますので、最高のポテンシャルを発揮するのは映画館です。
本作は間違いなく映画館が良いです。
この理由も追ってお話しますが、先ずは構成から。
構成
一般的な起承転結です。
- 「出会い(起)」から始まり
- 30分頃に一山があり
- 更に次の障害が登場し(承)
- それを覆す事実が発覚し(転)
- 終結に向かう(結)
1エピソードも概ね10分程度で作られており、100分の作品ですので、約10~12エピソード。これも一般的なハリウッド映画のテンポと同じです。邦画というよりハリウッド式といえます。主流の作り方ですので、観やすいはずです。
まぁ、これはあくまで作品構造です。
本作で注目しなければならない「構造」は、この作品における二つの側面。
・「西野亮廣さんのエンターテイメント」である点。
・「制作委員会方式では無い」点。
これが極めて重要です。
この二つの性質は、作品内容にも大きく関係してきます。むしろ、これありきの作品とすら言えるかもしれません。
ストーリー上、やたらと「上を見ろ」「信じ抜け」というキャッチフレーズが登場します。頻発します。十分に一回くらい言っています。普通の作品でここまで言ったら、流石に耳障りです。
しかし、この作品では必要です。
本作はあくまで「西野亮廣」さんの夢であり、彼を中心とするエンターテイメントであり、彼のバックボーン無しで映画を観るというのは不可能でしょうし、そこに物語全体をリンクさせていくのは当然の手法かと思います。
彼を中心として「次世代の作品の作り方」を提示するのが本作の目的もありますので、やけに同じ台詞が入ってくる……いや、画面の前にまで制作者の顔が出てきてしまっているのは、最早、作品の本質と言えます。
とても不思議な感覚です。作品を見ているのに、現実世界の動きを見ているようですし、これも作品内のテーマで語られますので、作品と現実が交錯して、大きな世界の渦でも見ているかのような感覚になりました。
インフルエンサーとは何たるか? それを知らしめる作品ですね。
「制作委員会方式では無い」については、事項でお話します。
映像
正直に申し上げると、この映画のクオリティは「想定通り」でした。
「製作委員会方式ではない」時点で、加えて西野さんが資金を集めをするのであれば、相応のクオリティが確保できるはずだと思っていました。
因みに、映像を作っている【STUDIO 4℃】は、↓を作っているクリエイターさん達。
宅急便繋がりではないですが、昨今アニメーション大賞を総なめにした「この世界の片隅に(監督 片渕須直)」。こちらも、不足分の資金をクラウドファンディングで集め、ハイクオリティのアニメーションを完成させました。
製作委員会、つまりスポンサーに資金を出してもらっての作品ですと、どうしてもクオリティに限界があります。
制限もかかります。
この限界値を突破したいという目論見は、明白に画に顕れていて、ほぼ全ての場面の映像クオリティが桁違いの出来です。単にCGが凄いだけでなく、音楽や音声への拘りが随所に見られます。声優陣も有名人ばかりです。
あの美麗な映像、大音量の迫力。
絶対に、映画館で観た方が良いです。
そこらのB級映画とでは、映像に掛かっている時間も資金も労力も違います。後々DVDで観ても魅力は確実に半減するでしょうから、勿体ないです。
さて、非常にクオリティの高い作品でしたが、同時に減点対象もあります。
因みに、私の評価点は大抵の作品が「80点以下」になるはずです。アニメ作品で80点を超えるとか、「エヴァンゲリオン(初代)」「魔法少女まどか☆マギカ」「宮崎駿氏」くらい。後「ビューティフルドリーマー(押井守)」やら「ガンバの冒険」なども入ってきそうですが、その時代の革命児となる作品でなければ80点を超えません。
本作のクオリティは、とんでも無く高いです。
只、高ければ良いというものでもない。
全く逆の立ち位置にありそうな作品に、
「ルパン三世 カリオストロの城(宮崎駿)」があります。
あんな、どうみても予算の無さそうな作品で、あれだけの作品に仕上げられたのは、後にも先にも宮崎駿大先生くらいのものでしょう。彼の狂気とも呼べる才能と、苦悩の結果によって作られた、血沸き肉踊る珠玉の名作です。
たった一人の天才によって集約された作品、その凄みがあります。
具体的に、本作と何が違うのか?
「声優の起用方法」
顕著にこれが違います。はっきり言って、本作の声優陣は著名人である必要があったとは思えません。
みんな、上手すぎます。
特に藤森さん(オリエンタルラジオ)が上手すぎます。全員上手すぎます。
あのクオリティの演技を素人に求めるのであれば、本業声優さんで良かったのでは?
(宣伝効果の利点しか見えない)
尚、宮崎駿さんの使い方は「素人より演技ができて、本業声優より上手くない。それが新鮮でリアリティを感じるから、俳優が丁度良い」でしたね。実際の演技指導も「上手い」に寄せたものではありませんでした。
もう一つ別のポイントで、
「高いクオリティが隙間なく入り過ぎている」
特に気になったのは「MV(ミュージックビデオ)のようなシーンが何回もある」です。これ自体のクオリティは高いです。でも、あれってかなり予算が掛かるはずで、何度もやる必要はあったのだろうか? 「君の名は」は一回でしたものね。
なぜ、こうなってしまうのかと言うと、「一人の意志によって作品が統一されていないから」でしょうか。
因みにこれは、「えんとつ町のプペル」という絵本の頃からの作品目的のようです。
各所で西野さんが語られていますが
「各分野の才能を集結し、共同作業で作る」
が、主旨にあります。
つまり、かつてのように、手塚治虫が一人で作る、宮崎駿が一人で作る、その才能だけで勝負する!
そんなスタイルへのアンチテーゼが、本作の目的でもあります。
一人の大天才による「統一」と、才能を集めた「クオリティ」。
太古から繰り返される「君主制」と「民主制」の構図。
新しい時代の、新しい才能の使い方。そしてビジネス手法。
いつだって、人間の歴史はこの繰り返しによって改変を重ねてきましたが、此度も同じです。
本作の挑戦は、この歴史のターニングポイントへの挑戦でした。
私の所感では「今回は80点を超えない」でしたが、皆様はどうでしょう?
どちらに一票を入れるのか? この時代の波に参加してみるのも、また一興ではないでしょうか。