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おすすめランク A
こんな人にオススメ ⇒ 男性視点の恋愛を観てみたい方
ストーリー | 3 |
脚本 | 4.5 |
映像 | 3.5 |
キャラクター | 4 |
総合評価 80点 |
【あらすじ】
とある療養施設に、記憶を無くした老婆がいた。彼女の元へ、一人の老人がやってくる。
「君に、読んであげたい物語がある……」
それは、若き男女の情熱的な愛の物語であった。
先日書いた記事↓
【2021年版 映画 不朽の名作ランキング 時間を無駄にしないおすすめ50選】
こちらを補足して参ります。
詳細を書きながら点数も再評価していますので、「あれ? 点数変わった?」が、多発しますが、仕様です。
さて、本作「君に読む物語」のキャッチフレーズで良く聞くのが、「ハリウッド版セカチュー」。
これだけでは何も説明されていませんし、意味分からんので、ちゃんと解説します。
最後の方で構成の駄目出しをしますが、観たく無い方は「point③」はスルーして下さい。
今回のポイント
point① 男性視点、男性価値観に基づく恋愛物
point② 緻密な脚本と、入念な擦り合わせ
point③ 終盤が緩い
今回、かなり構成の話ばかりします。(いつもですが……)
内容は観た方が早いくらい簡単なストーリーですが、簡単だからこそ、視聴前に読んだ方が良いと思います。
では。
point① 男性視点、男性価値観。
恋愛物でまず考察すべきは「どちらの価値観で作っているのか?」
通常は、女性価値観です。
当たり前ですが、男性諸君が「あぁ、今日は恋愛物観たいなぁー」って日は、四年に一度くらいしかありません。
生涯無くても不思議じゃないです。
恋愛とは女性のものですので、ターゲットは自ずと女性になり、そちらに寄せるのが当然です。
只、そうした女性専用恋愛ジャンルに、一発楔を打ち込んでおきたいと考える作家は多く、ちょいちょい男性用恋愛作品が登場します。
本作は、まさにコレ!
それが分かる箇所は無数にあます。
象徴的なのは、「絵」
ジャケットにもなっている「夕日+影絵+ボート」
このボートシーンは何度かあって、「白鳥の湖を渡るボート」などは、男性主観の典型です。
もう一つ、彼女が家に来たときに、美しい夜空を映すシーンもあります。
コントラストを過度に使用する色合い(夕日や夜空などの背景)
ごちゃごちゃした絵面(白鳥たくさん、とか)
男性は色彩認識、空間認識の能力が低いので、過度に演出しなければ理解できないのです。
女性視点だと「邪魔! 目障り!」になるかもしれないですね。
こうした絵的な表現からも分かりますが、やはり一番は行動。
本作の「行動」は分かりやすいです。
男は「待つ」
女が「動く」
基本的には、ぐいぐい来る女性をひたすら待つ男。
これ、男性の夢なんです(笑)
ぐいぐい来て欲しい。できれば受け身でいて、最後になんか格好良い言葉を言って、それでバーン! と心を鷲掴みにできないか?
んな事、できるはずがないのに、いつだってこれを夢見ています。
その成功例を書いている、完全に夢想物語です。
「女性が観たら、面白くないどころか、ムカつくんじゃない?」
とすら思いました。
後、やたらとキスシーンが多い所もそうです。どこでもかしこでもキスしまくります。
気持ちの盛り上がりがどうとか……面倒臭い! とりあえず、キス! それでOK! ってのが男。
概ねのストーリーが「物理的」な行動で絞められているのも、男性向けの特徴です。
女性陣が、洟で笑っちゃうような場面が盛り沢山!
そんな、男の為の男の理想を書いた作品が、なぜ、ヒットできたのか?
では次項。
point② 入念な擦り合わせ
勿論、こんな男の夢物語で恋愛物に殴り込みにいけば、返り討ちに合います。
では、どうしたか?
女性視点を入れた。
本作の最大の妙技だと感じたのが、
「母と娘のストーリー」が、サブプロットに組み込まれている点です。
※サブプロットは、別で話します。
男性物で「母親との対立」って、ほぼ無いです。
女性物ではめちゃくちゃ見ます。
本作も男性価値観を貫くのであれば、「対立」するのは「家」や「貧富」にするはずです。
勿論、こちらもベースに書かれていますが、メインは「母娘」。
正直、この辺りの関係性は男には分かりません。
然しながら、時折入ってくる女性視点エピソードがかなり強烈で、全体像の男性視点を歪めていました。
これが斬新で、多くもない登場人物を複雑に絡ませていたのも、女性陣側のサブプロットの出来が良かったからです。
女性作家も交えての、入念な擦り合わせがあったはずです。
脚本も絶妙に練られていて、バランスもとられていました。
特に! ラストを男性向けにするのか女性向けにするのか? ここに構造的な選択を持たせていました。
構造的な謎で最後まで観させる作品は、そうそう滅多にないので、私の「80越え作品」になったわけです。
で、最終的には「男性向け」の収束になったのですが、これが私は懐疑的でした。
point③ ヌルイ
ちょっと、ターゲット設定がブレていました。
作品のターゲット(視聴者)決める場合、「概ね、この辺りまでは理解できるだろう」という視聴者IQの指標を設定しなければならないのですが、これをヌルく設定しすぎた感があります。
「誰でも分かる」
にし過ぎた、って事です。
勿論、これが少年漫画であれば、この程度で良いです。
しかし本作は、前半、中盤の心理描写、行動などが、かなり大人向けでした。
「経験無いと、これ、分からないんじゃない?」
って部分が非常に多く、要は、大人向けで人生経験がある程度あり、視聴者IQが高めの人がターゲットになっているのです。
だから、「最後はどちら視点で締めるのか?」が吸引力になるのです。
が、プロット2という後半に入り、急に安易になりました。
細かく話すとキリが無いので1点だけ。
・子供がいらない
詰まる所「性行為」は不要。
あれがあってもなくても、本質に変わりがないですし、であれば無い方が良い。
子供達も同じ。
別にいても居なくても「二人の青春」には関係ない。
であれば、無くて良い。
無い方が、視聴者は想像できて楽しいのです。
なのに書いた意味が、まったく理解できません。
「子供」を作品上の裏切り、つまり、結局彼女は別の男とゴールした、に使うのかと思いました。
タイタニックは、そうしましたよね。(明日、タイタニック書きます)
ですが、本作にはそれがありません。「子供」が居る事に、理由(使い道)が無い。
本作が「セカチュー」みたいとか言われてしまうのも、色々なレビューサイトで「浅い」とか「ご都合主義」とか書かれてしまうのも、最後の軸がブレているからです。
天下のハリウッド映画ですから、んな事は分かってやっているのです。
つまり「ターゲットを甘く設定しすぎた」のでしょう。
序盤中盤と終盤、この乖離がなければ、もっと名作……
「不朽」になっていたかもしれない。
そんな、ちょっぴり残念な作品でした。
でも、名作クラスではあります。余裕で。