映画【おすすめレビュー】シンドラーのリスト

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おすすめランク AA

個人評価点 84

 

ホロコースト関連の作品では、最高傑作と名高い本作。

 

監督はスピルバーグ

彼自身もユダヤ系アメリカ人であり、本作では監督料の受取を拒否して製作されています。

そうした背景がありつつも、映画構成に関しては非常にきっちりしている作品です。

 

シナリオ構成面から追っていきます。

 

基本構成

 

以下の流れです。

 

1シンドラーがドイツ将校とのパーティで大金を使って騒ぐ。

2シンドラーが工場を作る為に、安くでユダヤ人を雇おうと計画する。

3ユダヤ人をあくまで労働力として金儲けを考え、賄賂施策もハマり大金持ちになる


4ナチスのSS将校が収容所へ到着。大量虐殺

5SS将校とシンドラーの関わり

6SS将校、シンドラーの変化


7シンドラーがユダヤ人を買収(タイトル「シンドラーのリスト」

8買い取った女性が、手違いでアウシュヴィッツへ送られるも、なんとか救い出す。

9シンドラーが明確に「ユダヤ人救援」へと動きはじめる。

 

こうした構成です。テンプレ的な構成ですね。

線引きした場所がぴったり1時間のラインです。

本作は3時間ですので、全て1時間毎に大きな事件が起きています

完璧なテンプレ構成です。

度々、ツイッターやら個人コラムなどで目にするのですが、

「どの時間に何をすべき……とか、そういうのはシナリオ作成において意味がない」

とか言っている人が散見されます。

極論を言えばそうでしょうが、ハリウッド等の一流作品は全て、しっかり時間計算されています

映画ができて百年ほど経ちますが、その間、世界中のプロが研鑽に研鑽を重ねて辿り着いた「基本」ですので、必要があってこうなっているのです。

 

特に、スピルバーグは物凄くテンプレ構成が多いです。

テンプレ構成を徹底しています。

 

世界一の監督が、世界一忠実に基本を行います。

 

スピルバーグに限らず、ジェームズ・キャメロン、リドリー・スコットなどもかなり細かく忠実です。というか、ハリウッド上位陣はほぼ全員忠実。

基本から外れるリスクを取るより、基本通りに行い、その中で面白さを引き出す方が圧倒的に有効だと知っているからでしょう。

 

加えてもう一つ、基本に添う必要性があります。

 

低予算

 

スピルバーグの最も優れた能力は、「低予算」での作品密度。

本作も2,200万ドル。(約23億円)

このクラスの作品としては、超超低予算です。日本映画ですらもっと掛かっている作品はあります。

今のアメリカドラマの制作費が1話10億円と言われているので、どれほど低予算か分かります。

 

その中で作る必要がある。

 

ってなると、構成イジるというのは好ましくありません。

基本というのは視聴者がもっとも「観やすい」構成ですので、それを外して「観づらい」にすると、別の何かで補完する必要が出てきます。映画では「映像」ないし「配役」等で引っ張りますので、予算が掛かります。

メリットが無いです。

 

多くの作品で実例があるのですが、予算や制限がある作品の方が、最終的には有名作品になっている場合が多々あり、本作はまさしく代表例でした。

 

もう一つ、構成の基本に触れます。

映画内容にも関係します。

 

三人の主要人物

本作の主要人物は三人です。

その他は全て端役です。

 

1シンドラー 苦難を解決する者

2シュターン 苦難を受ける者(ユダヤ人代表)

3ゲート   苦難を与える者(SS将校)

 

この三名がドラマ構成員です。

この構成もテンプレですが、本作ではこうである意味がありました。

 

人間の多面性

 

シンドラーもゲートも、現在の「良い人間」からは、かけ離れています。

ゲートについては非道な殺戮者ですが、シンドラーも非道な経営者です。

シンドラーがユダヤ人を雇った理由は「安いから」以外の何物でもなく、人として接していません。

ゲートも同様です。

ユダヤ人と接する事で、次第に心は動いていきます。

 

2人の心の動きこそが、ドラマ。

そして最終的には、「善へ進むか」「悪に留まるか」の選択を迫られ、それぞれの結論へとたどり着きます。

ホロコーストを描いた作品ではありますが、視点はあくまで「ドイツの権力者」となっています。

 

この心の動きも非常に分かりやすく作られており、観ている方も「考える余地」を含める時間もありました。

只々迫力のあるアクションや映像で詰めるのではなく、一考させられる映画ですので、一度は観て欲しい作品です。

 

もう一つ。

 

冒頭の重要性

 

本作の冒頭が素晴らしかったですね。

シンドラーがドイツ将校達のパーティに参加するのですが、この時のシンドラーは「不審者」でしかなく、でも何かを企む人間です。

謎が詰まっており、シナリオ全体を牽引できる魅力的なシーンでした。

後に、このパーティが何だったのか? などが理解できるのですが、このシーンの意味がずっとシナリオにも影響してきます。

 

冒頭だからインパクトのあるシーン! 

ではなく「起」としての意味あるシーンになっています。

しかも、時系列も崩れていません。(★ココ超重要)

 

意味もあり、謎もあり、インパクトのある素晴らしい冒頭でした。

ここだけでも一見の価値があります。

 

どのような映画ランキングでも必ず上位選出される理由がありすぎる、素晴らしい名作でした。