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おすすめランク A
こんな人にオススメ ⇒ 男子が好きなヤツ、全部詰め込まれいます
ストーリー | 3.5 |
構成 | 4 |
画 | 4 |
キャラクター | 4 |
総合評価 82点 |
あらすじ
人類が宇宙に進出するようになった21世紀初頭、人類は「宇宙怪獣」と通称される正体不明の宇宙生物群 (STMC) の脅威にさらされていた。
その脅威に打ち勝つため、地球はマシーン兵器の最強型決戦兵器であるバスターマシン「ガンバスター」の建造を進めていた。
(ウィキペディアより)
無類のスーパーロボット大戦大好きおじさんの私は、本日10月発売予定の最新作「スパロボ30」を予約致しました。
無条件に、ルーティンの如く左指が動きます。
ふとラインナップを見ました。
トップをねらえ! 入ってないやん!
スパロボの中で、最もスパロボだった作品は何だろう?
ガオガイガー?
ガンダムW?
マジンガー?
ゲッター?
否。
トップをねらえ! である!
大好きな作品ですので、力尽きるまで語ってみます。
スパロボ発売時でも良いのですが、入ってないんだから仕様が無い!
今、話す!
初代ガイナックス作品の名作
勝手に初代と言っていますが、これは初代社長の岡田斗司夫さん在籍時までと定義しています。
ですので、エヴァンゲリオン時代は私の中では二期です。
この初代が、アニメ変革を起こした時代。
「DAICONフィルム」、「王立宇宙軍 オネアミスの翼」「ふしぎの海のナディア」と名作が多数ひしめく中、トップはこちら、トップをねらえ!
初期のガイナックス、ナディアを継承しているエヴァあたりもですが、SF色が非常に強いです。これは単に岡田さんの影響でしょうし、本作は原作、脚本が岡田氏です。(実際には山賀さんらしいですが、岡田信者の私はこれで通します)
SFを非常に分かりやすく噛み砕いた内容で、全6話の尺を目一杯に使うテンポの良さもあります。
(内容は後述)
また本作は、庵野秀明氏の初監督作品でもあります。
庵野さんと言えば、「破壊」の美学。
少々予算不足もあってか書ききれていない部分、控え目な部分もありますが、見惚れる破壊、爆破は当時から冴えわたっています。
迫力満点の爆破シーンに見惚れて下さい。
ともあれ、本作の見所は庵野流破壊術! ではなく、ドラマ構成です。
キャッチフレーズともなった名言から解釈していきましょう。
炎の熱血友情ハードSF宇宙科学勇気根性努力セクシー無敵ロボットスペクタクル大河ロマン!
本作のキャッチフレーズです。
分かりやすいですね!
要は、なんでもあり!
只、かなり男子向けに設計されています。かなりというか、男子受けしか狙ってません。
男子が好きなものを全て注ぎこんだ内容です。
1 熱血
ワザとらしい熱血です。熱血を完全にギャグで使っています。
だって、冒頭のシーンが、「ロボットが腕立て伏せをする」なんです。
機械が腕立て伏せしても意味ないでしょ……というツッコミ前提のシーンから入ります。
熱血という名のギャグですが、これには他にも使い道があります。
尺の短縮です。
本作、予算が無かったのです。(実際の話)
ですので、13話フルとか作れません。ラストシーンも静止画です。
予算不足を覆す為に利用されたのが、ユーモア要素と熱血。
中でも熱血は強烈でした。
本作はロボットアニメですが、主人公のノリコは、ハチマキを撒いてロボットを操縦しています。謎です。
トップをねらえといえば、これ! って画像がコチラですが、
少女が腕組み仁王立ちとか、インパクト強すぎます。(なぜかレオタードだし)
でも、熱血! であれば、なぜだか正当化されます。
短時間でインパクトを出すのに、熱血は必須の演出でした。
熱血の良いところは、細かい説明が不要という点です。
シナリオの中で最も時間を割かれるのが、人の心の変化ですが、熱血はこれをすっ飛ばせるんです。
思いきり泣いて、笑って、怒って! が可能ですので、かなり時短になります。
2 ユーモア要素
ユーモア要素の例が、3話の冒頭。
「男と女のラブゲーム」という歌謡曲が流れる中で、「あらすじ」が書かれます。
この粗筋が、科学論文です(笑)
前の2話の内容ではなく、科学論文形式で、あの爆破はエーテル理論によるうんたらかんたら……と、専門用語でまくしたてます。
一切、内容には触れず、数式とか出てきます。
ぶっとんだ演出ですが、キレっキレですねー。
この間2分です。
誰も理解できない科学論文を提示して、この作品はあくまで「SF」だと伝えています。また、この論文を書いているのは、主人公ノリコの相棒カズミであり、いつどこのタイミングでこれを書いたのかがオチに繋がっています。
これもまた、時短です。
どんなドラマにもシリアスは必要ですが、これをお膳立てするにも尺を取られます。
もっとも最短な演出方法は「前後のシーンで落差をつける」でしょう。
ユーモアを散りばめたのは、シリアスまでの時短が目的です。
それにしても、鮮度が抜群ですね!
若い勢いが出ていて楽しいです。
もう一つ重要な点で、ユーモアの無い作品では売れない鉄則があります。
当時、「王立宇宙軍」にて借金まみれだったガイナックスとしては、絶対に失敗は許されませんでした。売れる確率を上げる理由もあったかと思います。
トップをねらえ! のキモは、ユーモア。
かなり馬鹿々々しい雰囲気を作っていますが、中身はガチガチに作られています。
このギャップもまた名作と言われる所以です。
3 エロ
セクシーというか、単なるエロ(笑)。乳房が多々出てきます。
なんといっても、ラストの名シーン。
主人公は最後、自らを地雷原としてブラックホールを作り出します。
大迫力の、最も盛り上がるこの場面!
雄たけびをあげるその少女は……乳丸出しです(笑)
丸出しというか、自分で胸元のシャツを破っておっぴろげにします。
ユーモアですね!
勿論、これは主人公ノリコの感情が高ぶっていて、雄たけびと共に服を破ってしまったという、おバカ熱血娘のキャラ付けでもあります。
散々引っ張った熱血をエロで紡ぐとか、センスありますね!
全てが噛み合った、乳丸出しなのです!
後、他にも狙ったエロ描写が多いです。ですが、ほんのりエロ……とかではなくて、めちゃめちゃ狙ってエロをしているので、分かりやすくお馬鹿です。
基本は男子向けでしょうが、女性でも馬鹿々々しくて楽しめると思います。(これもユーモアのなせる業)
4 SFと人間ドラマ
正直、本作のロボットは格好良くありません。ガンダムの方が格好いいです。
ですが、見せたいテーマがそこじゃないんです。
SFとドラマ
ロボットもSFですが、そういうSFではなく、古典SF御馴染みの「相対性理論」。
時間の遅れ。
ウラシマ効果です。(光の速度に近づくほど、時間が遅れる)
定番中の定番で、後に新海誠さんが「ほしのこえ」で本作を完コピされます。
本作「トップをねらえ!」も元々は「終わりなき戦い(ジョー・ホールドマン)」から着想されていますし、ウラシマ効果=王道SFって感じですね。
(Amazon 「終わりなき戦い(ジョー・ホールドマン)」)
なぜ王道になるかというと、ドラマを書きやすいんです。
本作でも徹底的に描かれていますが、宇宙に出て行って戦うというのは亜光速での戦闘が多くなります。ワープなどすれば、地球上の時間と宇宙上の時間はズレます。
つまり、宇宙の果てで命を賭して戦っている兵士は、どんどん時間に取り残されます。
地球上には、自身を待っている人も(老衰で)いなくなります。
誰の為に戦っているのか、分からなくなります。
この極限状態で、ドラマが生まれやすいのです。
5 百合作品
もうなんでもありです。全て詰め込まれています。
本作の百合要素ですが、主人公のノリコと、お姉様カズミの友情です。
この友情の裏付けが、先ほどの「宇宙での孤独」になります。
孤独に戦うノリコを、カズミは一人にしません。
そこに、ドラマの焦点を絞っています。
その上で、
全てが集約された、ラストシーン
アニメ界屈指のラストシーンが、登場します。
ブラックホールを作り、宇宙怪獣を殲滅したのは良いものの、ノリコとカズミは亜光速の世界に突入します。
二人の時間はほぼ止まっていますが、地球上では12,000年が経過してしまいました。
漸く地球に帰還できた二人は、真っ黒な地球を目の当たりにします。
「人類は絶滅してしまったのか?」
因みに、現在のホモサピエンスが12,000年存続する見込みは薄いです。宇宙からの外敵とかは無関係に、他の様々な理由で絶滅していても当然です。
ですが、真っ黒な星に光が浮かみ上がります。
「オカエリナサイ」
と、街の明かりで地球上に照らしだされます。
名場面ですね!
私の中で、アニメ史上最高のラストシーンの一つです。
ですが、ここだけでも観て! とは言いません。
上述した全ての要素が蓄積させた結果を見事に結びついたラストだからこそ、素晴らしいのです。
こんなに綺麗にまとめた作品は、そうそうありません。
たったの6話です。
騙されたと思って2時間、使って下さい。
十年に一度出るか出ないか? いや、それ以上のラストを観られます。
後、「大河」ってキャッチフレーズにありますが、その理由もまたラストシーンです。
あくまで、12,000年未来から見た時の「宇宙怪獣VS人類」という歴史物、ってスタンスでシナリオ作成されています。
12,000年先の未来に、最早地球では伝説として語り継がれている「本人達」が帰還しました! っていうのが、ラストシーンの意味です。
だから、大河ドラマなんです。
キャラクター
ここからはオマケです。書きたい事が1/10も書けていませんが、ここだけは書いておきたいので記載します。
キャラクターの映え。
先日シナリオ講座でも書きましたが、
基本、どれほど長い作品でも3人しかキャラクターは書けません。それ以外はモブです。
※「書く」というのは、画面に映っているという意味ではなく、全てを書ききる事ができる&視聴者が整理できる範囲です。
本作の3人は、主人公ノリコ(当然ですが)、ヒロインのカズミ(当然ですが)、友人の天才ユングです。
天才ユングが、大好きです。スパロボで登場したら、何を差し置いても真っ先にMAX改造するキャラの一人です。毎回、天才と称しておきながら微妙な能力値でイラつきます。アムロくらいの能力値にして欲しいです。マジで。
このキャラ、かなり使えます。(スパロボ的な意味ではなく、シナリオ的に)
天才として登場した当初は主人公達のライバルですが、すぐに友人になり、すぐにパリピー(一般的な人)になり、エロ要因になり、最後は残された人類の統率者になります。
主人公とヒロインだけは物語が進まない場面も多いのですが、その時折、適材適所で欲しい人材になっています。
さすが、天才です。
本作は内容の密度に対して尺も予算も無いので、かなり強引に物語を進めています。
特に、キャラ立てについては強硬しています。
主人公の恋愛シーンは大幅カット。「関節……キッス……」、だけ。
恋愛要因のカズミも、ビンタ一発と、感動の合体シーンだけ。
かなり偏った強引なキャラ立てをしています。
それを成立させたのは、天才ユングが居たから。
人間ドラマは、女性陣側だけしか書かれていませんが、そのほぼ全てに天才ユングが補助で入っており、人間らしい言葉で収めています。
その結果、人類の統率者になるという、まさに天才です。
そして、それが、感動のラストシーン「オカエリナサイ」に繋がるのです。
(この「オカエリナサイ」は、ユングと主人公二人が別れる際の台詞です)
天才ユングは時間的に12,000年も経っているので亡くなっているのでしょうが、その意志は人類に受け継がれている……。
(´;ω;`)ウゥ 天才や
まとめ
これ、幾らでも書けそうなのでこの辺りにします。
冒頭で、「スパロボ的」と書いた理由とかは、たぶんスパロボファンなら見れば分かります。
「合体シーン」も、アニメ界屈指の合体なので観て欲しいです。腕組しながら合体するノリコが最高過ぎる! これだけで後1000文字いけそう。
本当に、捨て所がない!
予算と戦った作品で、限られた資源の中で、詰められるだけ詰め込んだ作品です。
度々思うのですが、「好きなだけ書けます」って環境で書かれた作品って、つまらない作品が多いです。
ガンダムやカリオストロもそうでしたが、めちゃくちゃ制限があって、針の孔を通すかのように作られた作品が、概ね名作になりますね。
本作も、間違いなくその一作だったと思っています。
天才ユング使いたかったのに……
ってスパロボ勢は、アニメで癒されましょう。燃えるかもしれませんが。。
率直に名作なので、観て損は無いです。
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