おすすめランク A
こんな人にオススメ ⇒ 熱い青春スポーツ物。文学的な物語が好き。娘に疎遠にされている貴方!
ストーリー | 3 |
構成 |
3.5 |
画 | 4 |
キャラクター | 3.5 |
総合評価 78点 |
【あらすじ】
中学時代輝くことなく終わったウイング、周防(すおう)すみれは、ライバルである曽志崎緑(そしざき・みどり)から誘いを受ける。
「一緒のチームに行こうよ、一人になんてさせないから」。
そんな真摯な言葉に、周防が出した答えは……。たくさんの個性豊かな選手が集まり、今物語の幕が開く!!
2020年、嘘偽りなく追っていた漫画は数本です。
それがこちら、「さよなら私のクラマー(完結)」
女子サッカーをテーマにしたスポ根漫画です。
完結以降、熱烈に追っている漫画は半年たっても出ていません。
本作、かなり微妙……な終わり方をしていて、
え、それで終わり? という消化不良な最終回でした。
(実際に私、何か月か先まで終わったと気付いていませんでした)
でもね、でもね……
誰が待望したのか、アニメ化、放送中……。
誰が待望したのか、映画化(アニメ)、公開予定……。
その出来栄えたるや!
やめて!
唯一の押しを、汚さないで!
月刊マガジン連載の第一話から熟読していてコミック全巻を買ってる生粋のファンですので、検索順位とか関係なしに言わせてもらいますけど、
流石にあれは無い!
(アレのリンク貼ろうかと思いましたが、駄目だ……ファンとして、黒歴史を広めるわけにはいかない)
今時、あのクオリティのアニメが放送されていると知って、ゾっと背筋が凍りました。
このまま劇場公開?
マジで言ってんのか……。
……、救いたい!
ファンだから!
原作、100倍いいから! お願いします! こっちを読んで!
お願いします!
原作、1000倍いいから!
さて、原作は新川直司 さん。前作は実写映画化もされた「四月は君の嘘」
絵で分かる通り、「少女漫画」寄りのタッチで描かれる淡い恋のメロディー。
本作もスポーツ物という事でタッチはやや鋭くなっていますが、男女どちらにも受けそうな作品です。
が、新川さんの作風は、かなり男性向けです。
「え? マジで?」
という方も多いはずですので、ポイントで追ってみましょう。
では、ポイント①から見ていきましょう!
ポイント① 女子高生っぽい会話
分かりやすく、狙って書かれています。
漫画は紙面が少ない関係もあり、会話文が重要です。余計な台詞を書くにも何かしらの意味がなければ採用する必要が無いので、メインストーリーに関わる部位以外は、作家の特色が濃く出るポイントになります。
本作は「女子高生」風。
風、なのは、男性にとって女子高生は、メタモル星人級の謎生物だからです。
こんな会話をしている可能性がある! という想像を巡らせ、にやにやするのが丁度良い具合です。
おそらく、女性作家でこういう書き方はしないだろうなー、という会話。
人物一人にフォーカスするというより、「女子高生」そのものを俯瞰的に夢想しています。
全体の雰囲気を統一できるので作風の見通しが良くなる半面、キャラクターが同化、区別がつき辛くなるデメリットもあります。
この辺りに、好き嫌いは出てしまうかもしれません。
私は好きです。
男性には多いでしょうが、キャラクターの顏が全く同じでも、全然気にならない。
実は、サムネの1巻の表紙絵、ずっと曽志崎だと思ってましたが、大きな絵で良く見たらたら恩田でした。(別人物)
人物の絵も似ています。
でも全然気にしない。
そこを本質と捉えない方、男性向けですねー。
ポイント② 文学的な絵
この作家さんの持ち味。
前作「四月は君の嘘」から全開でしたが、本作も全開。
ほとんどのエピソードの最後は「文学」っぽい台詞と、「文学」っぽい構図の絵で終わる。
ないし中盤の見せ所は必ず「文学」風です。
風、というのは、風だからです。
文学はあくまで「文」なので、絵のある漫画とは集約の方法が異なります。
例えば第一話、大好きなソッシー事、曽志崎の台詞
「ボールは、丸いんだから……」
意味分かりませんでした。
ですが、人物の表情、風景、ふんだんに淡い青春の空を描いた上で紡がれると、それっぽく聞こえます。
それが良い!
深い事を考えずにヌルっと浸る。
丁度いいんです。
文学っていうのは、そこに意味を持たせないと強調されないので、伏線をたんまり仕込み、強調台詞に集約させようとします。
文学の面白さはそこですが、漫画は、あくまで漫画。
絵で語る事、絵に浸る事が何より大切!
フワっと読めれば、それが最適なんです。
ポイント③ 月刊少年マガジンだという事!
最重要です。
漫画に限らず「どこで掲載されるのか」は、とてつもなく巨大な要素です。
本作掲載の「月刊少年マガジン」って、かなり特殊な少年誌です。
いや、少年誌じゃないです。「月刊おっさんマガジン」です。
私、三十年以上読んでます。
その間、メイン作家がほぼ変わっていません。
読者もほぼ変わっていません。
少年だった私も余裕のおっさんです。
読者の年齢層が高いので、未だに作りが昭和なんです。
逆に、流行り物にまったく左右されないので、読者は安定しています。
本作の特徴も、ここにあります。
オジさん達が、頑張る女子高生を愛でる!
読書目的が完全にこれです。
娘の部活動を傍から眺めている感じです。
文学「風」なのも、日々会社のストレスに揉まれるオジさん達の息抜きに、込み入った思想は不要なんです。
サラっと読みたい。
本作で重要な登場人物に「ぐーたらなオッサン監督」がいます。
完全にメタファーです。我々の(笑)
このぐーたら監督、生徒達を「見てない素振り」をしていて、めっちゃ見てます。ずっとチラ見してます。
そして女子高生から
「サッカー教えてください!」
と迫られ、「しゃーねーな」といいつつ、熱血に指導します。
で、そこが最終話です。
オッサンの熱血が、最終話なんです。
もうね、オッサンの夢でしかない!
娘の部活を応援したい。熱血に指導したい。「指導してください!」とか、超言われたい。
だって、現実では、絶対に言われないから!
娘の部活の大会を見にいこうとしたら、「来ないで!」と突き放された、哀れで悲しい無数のオジさん達、の「夢」……。
それを代弁してくれている、素晴らしいカタルシスを持った名著なのです。
言い過ぎているかもしれませんが、当たらずとも遠からずだと思います。
まぁ、そんなオジさん達には楽しく読める作品なので、でも家で読んでいたら嫌な目で見られるので、こっそり電子書籍で読みましょう。
長くなりましたが、本作は書きたい事が山ほどあるので、また書くかもしれません。
去年一番読んだ漫画ですが「78」点にしたのは、流石に最終回が消化不良だったからです。
→ 月刊少年マガジン特集「ましろのおと」(わたなべめぐみ) こちらも覗いてください。