おすすめランク C+
こんな人にオススメ ⇒ 難しい事は考えたくない。綺麗な絵と音楽を聴きたい
ストーリー | |
映像 | |
キャラクター | |
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総合評価 65点 |
【あらすじ】高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らす少女・陽菜。彼女には、祈るだけで、空を晴れに出来る不思議な能力があった…。
(「公式」より)
因みに、私の「評価点」は高ければ良い分けではありません。
月に一回映画館に行けば良い方、という方でしたら60~70点の作品の方が面白いと思います。
点数というより、ターゲットの指数的なものです。
60点に向けて作った作品が65点であれば、作品としては成功であり、そもそも最も購買層が多いのが60点前後のゾーンですので、ここで集客できた事は商業的な価値があり、点数は高いけど売れなかった作品に比べて遥かに市場価値があります。
ってな事で、本作は65点です。
明確に、このラインを狙って作られた作品ですので、作品としては成功しています。
では、その解説をしていきます。
構成
先日「えんとつ町のプペル」の感想を述べましたが、酷似していますね。デジャブかと思いました。
あちらの感想で「MV(ミュージックビデオ)っぽい作りが2回必要か?」と書きましたが、こちらも2回、厳密には4回。
映像のクオリティもほぼ同等。兎に角、絵は綺麗です。
映像が美麗なのは新海さんの拘りで、昔からそうした作りですが、「君の名は」のおかげで予算が取れたのか、凄まじい出来栄えでした。
綺麗な映像、MV、これが売れ筋の主流なのでしょうね。
詰め合わされるエピソードも「映像向き」の場面ばかりで、特に深く考える必要もなく、美しい画と美男美女のボーイ・ミーツ・ガールに酔いしれれば良いので、若年層にも観やすい内容になっています。
ストーリーについては苦言が多いので、以下の【ストーリー】は、「今の」ファンの方は読まない方が良いかと思います。
ストーリー
美男美女が出会う。以上です。
いや……、「以上」にしておいて欲しかったです。本作の狙いって、市場の最も広い「ミーハー層」であって、美麗な絵と迫力でゴリ押しする作品だと思うのです。
その割にはやけに捻った台詞を入れてきたり、一見格言に見えるような「現実世界への隠喩(メタファー)」があったり、大人も狙っているよ! 感が、鬱陶しかったです。
大人にも向けた……、の割には「銃」がどうとかのエピソードって、後半の盛り上がりを作るだけの中身の無い話ですし、そもそも主人公の男の子の行動動機が最初から最後まで全然分からないですし……ヒロインも分からないですね。
雰囲気だけ出してる割に、ドヤ顔で狙った台詞もあって、バランスがめっちゃ悪かったです。
ですので、素晴らしい映像があったのですから、それを重視するだけの豪快な王道ストーリーの方が見やすかったです。
こんな風に苦言を述べると、オタク臭い! って思われるでしょうが、新海さんって、そもそもそういう層に向けた監督なんです。
マニア層の皆様は御存知でしょうが、アニメ界には幾つかの転換期があります。
手塚治虫、宮崎駿さん等が作った昭和アニメ界。この時代は「大資本の中で、大勢で作る」が当然でした。
これを覆したのが、後に「ガイナックス」として名を馳せる、庵野秀明さん等を中心とした「素人集団」です。素人で巨額な資本が無くても、才能だけで良いアニメが作れると提示します。
そしてもう一つ、それが「新海ショック」です。
「ほしのこえ」という作品を、彼はほぼ一人で作ります。「アニメは大人数で作る」を根底から覆した作品で、内容的にも非常にハイドラマなSF作品で、当時、マニア層の絶大な支持を集めました。私も、その中の一人です。
ですので、今、こうして「大衆って、こういうのが好きなんでしょ?」というシーンばかりを集めた作品を見ると、寂しさで一杯ですし、苦言の一つも言いたくなるというものです。
いや、分かっていますよ。売るというのは、そういう事ですし。狙って売れる作品が作れるのですから、それはそれで素晴らしいのです。
でもこうなってくると逆に、「我が道を行く」で売れている宮崎駿さんが、やっぱり凄い! という、原点回帰になってしまっているような気がして、あの時の「新海ショック(次世代)」を夢に見た我々としては、もって行き場の無い辛さがあります。
感傷に浸ってしまいましたが、作品としては見せ場が多く、映像も美しく、マニア層には向かないかもしれませんが、広い範囲の視聴者が安心して観られる、良い作品だったと思います。
個人的には、「君の名は」とやっている事に大差が無いので、どちらも見ていない場合、「君の名は」から観る事をオススメします。
【追記】
作品としては「えんとつ町のプペル」と然して大差は無いと思いますが、「えんとつ町のプペル」の方がストーリー的に一ランク上である点(無駄がない)、作品の社会的意義からみて、評価は高くしています。