【シナリオ書き方講座】初級編④ 3人で書く


シナリオで考案すべき事は、二つしかありません。

 

・アイディア

・人物

 

そして、多くの「書けない」と思い込んでいる方は、「アイディア」が全てだと思い込んでいるはずです。

 

違います。

 

人物が全てです。

 

シナリオとは、ストーリーとは「主人公」を書く為だけに存在しています。

アイディアは勿論必要ですが、主人公の邪魔になるものは不要です。

 

何度でも言います。

 

人が全てです。

 

この先、もっと詳しい解説が入りますが、「人を書く為に」という大前提で述べております。

逆に、人物さえ書ければ、ストーリーは後からついてきます。

 

という事で、今回は 人物

最重要項目となります。

具体的に、人物から物語を作る方法となります。

 

今回、重要ポイントは3つあります。

とんでもなく重要なポイントなので、是非参考にしてみてください。

 

 

創作手順① 3人で書く

 

手順ですが、まずは何も考えなくても良いです。

3人書いて下さい。少なくても駄目、多くても駄目です

3人です。

適当に名前を紙にでも書いて下さい。

 

ケンシロウ ②ユリア ③ラオウ

 

とか、今はしておきます。

 

この三名に、役割を与えます。

 

【主人公】

【主人公の目的を達成させる人】

【目的を阻害する人】

 

誰にどれを当てはめても良いです。

とりあえず、

 

ケンシロウ【目的を阻害する人】
ユリア 【主人公】
ラオウ 【主人公の目的を達成させる人】

 

としておきます。

 

さて、ここで一端筆をおき、この言葉を反芻して下さい。

重要ポイントです。

 

重要ポイント① 主人公とは、苦難と対峙する者。

 

苦難の無い主人公は、主人公の資格がありません。

ストーリーとは、主人公が苦難に立ち向かう話、の事を言います。

苦難のない物語は、物語ではありません。

なぜ?

については、またゆっくり話しますが、結論だけ述べると、

 

苦労しない人に、人は魅力を感じない。

 

物語だけではなく、現実世界でも同じです。苦労知らずのお坊ちゃんに、何の感情移入もしないはずです。

苦労している人は、助けたいと思うはずです。

要は、そういう事。

苦労しない主人公なんか、主人公である必要がありません。

 

ですが、苦労するだけでも物語にはなりません。

さて、重要ポイントです。

 

重要ポイント② 主人公に【目的を達成させる人】。

 

例えば、これが恋愛物だったとして、目的は?

Aさんが片思いのB君と両想いになる。

となると、B君はAさんの【目的を達成させる人】です。

 

異世界転生だったらどうでしょう。

Aさんが、異世界を征服する。

となれば協力者のBさんは【目的を達成させる人】です。

 

ミステリィだとどうでしょう?

Aさんが、謎のストーカーに狙われていて、恐怖から解放されたい。

となれば、謎のストーカーを見つける探偵Aが【目的を達成させる人】です。

 

主人公しか居ないと、只の日記です。

【目的】に到達できるか? できないのか? 

それが、物語となります。

 

では、その物語が、簡単に達成できたとして、それ、面白いですか?

 

はい、重要ポイント。

 

重要ポイント③ 主人公の【目的を阻害する人】。

 

これに関しては、「人」じゃなくてもOKです。

具体的には戦争系の映画に多い「社会情勢」とか、病いとか、貧困とか……、主人公の目的を阻む事象であれば、この役割は熟せます。(SFではこれが多い)

 

ですが、そうした大風呂敷を広げる作品が全てでは無いですし、そうではない場合も多いです。

仮に、そのように「情勢」を【目的の阻害】に設定していたとしても、それを体現する【人物】にした方が、伝わりやすく、観やすいストーリーになります。

 

例えば、恋愛物。

AさんはB君が好き。でもそこに、B君よりもモテて、イケメンで、尚且つ優しいC君が現れる。

これだと、【本来の目的】が阻害されます。

阻害された上で、どちらを選ぶのか? ないし、どちらにも振り向かれない? ないし、本命B君には振り向かれず、C君に鞍替えする? 

などなど、物語の分岐点が生まれます。

 

簡単に目的達成するクソ下らない物語にしない為には、この役割は必須です。

 

 

はい!

 

これが登場人物の役割の全てです。

 

全て! です。

 

え? もっと他にあるでしょ? と思われるはずです。

 

ありません!

 

それがあると思っているから、何人も何人も無駄に人物を増やすのです。

次回に話しますが、「人物」にも色々と定義があります。

物語を動かす為の主要人物は、3人だけです。

多くても少なくても、物語は成立しません。

※別の方法は、中級編か上級編で書きます。ほぼ、使う必要が無い技術です。

 

「???。 何言ってんの? 私は、もっと沢山の人物を考えているし、もっと大きな物語を考えているけど?」

 

って、思う方も大勢いるはずですが、ここは受け入れて下さい。

詳細は追って書きます。

人物を大勢出せば良い、ってものじゃないんです。

 

3人がベストです。それ以外は、サポーターしか使い道がありません

 

重要な余談が長くなりましたが、再度、手順に戻ります。

 

 

創作手順② 3人を兎に角、考える。

 

3人以外に、名前は付けないで下さい。(これも重要

名前あり、なし、は凄まじく重要です。

3人以外は「村人A」「友人B」とかでいいです。というか、そうして下さい。

オマケを考えるのは、主人公達ができてからでいいです。

 

具体的に考えてみます。

 

ユリア 【主人公 苦難を背負う人】

 生まれながらに、世界的宗教団体のトップの娘に生まれた。

 信者の為に「聖女」を装って来た。

 本当の自分は自由奔放に生きたいのだが、それが許されない。

 家出をした事もあるが、門から百メートルも行かない場所で捕縛された。

 「もっと勇ましい男であれば、自由に生きられるのに」と願う。

 病にかかり、寿命が短いと知る。

 自由と勇ましさを願うようになる。

 

ラオウ 【目的を達成させる人】

腕力では誰にも負けた事が無い。

戦国乱世を生き抜いてきた。

その中で、多数の部下ができた。

部下達を統率する為に、過激なパフォーマンスで村を蹂躙したりもした。

その介もあって、勢力は拡大して国内随一の武装集団となった。

しかし、暴走気味の組織は熱を増し「国」への反逆を目論み始める。

国崩しの一手として、「宗教」を壊すと決める。

ラオウ本人は乗り気ではない。

彼は、「力」でしか認められなかった自分を、別の何かにしたかった。

襲撃でユリアと出会い、彼女へ自由を与えるという小さな夢に、自信の自由を見つける。

ユリアを奪い、逃走する。

 

ケンシロウ【目的を阻害する人】

  ラオウの義兄弟。同じ武術教室の門下。

  幼少期、「聖女」ユリアに一目惚れをする。

  健全なユリアに惚れるのだが、ユリアがラオウと駆け落ちしたと聞く。

  武術教室から、「ラオウ抹殺」の使命を受ける。

  義兄であるラオウを慕ってもいるが、世の中がそれを許さない。

  「自由とは、何をしても許されるという事ではない」

  と、ラオウ抹殺を決意する。

 

 

こんな感じで、3人だけを纏めます。

どんどん深堀していきます。

一人だけで千文字くらい分(Wordで2,3ページ分)は考えます。

とりあえず、そこまでやってみてください。

やれば分かります。

 

もう、物語が一本出来ている、と。

 

これで2時間分の脚本書いてね、と言われれば「無理です! もうちょい時間下さい!」くらいのものが、出来ているはずです。

 

因みに、今は例として「北斗の拳」のキャラクター名と世界観を使いましたが、これも有効なやり方です。

名前はパクリましたし、設定もパクリましたが、名前と絵だけ変えれば、盗作とは言われません。

 

↑のシナリオで、「これは北斗の拳のパクリだ!」と言う人はいるかもしれませんが、そんなの、どの漫画でも映画でも小説でも同じです。

百年前に、芥川龍之介も言っています。

「俺が『これは新しい!』と思った事って、もう既に誰かやっているよな」って。

 

物語というのは、【人物】を変えているだけで、結局は既存作品と同じ事をやっています。

ですので、

「斬新なストーリーを!」

とか考える前に

「私だけのオリジナル人物を」

を、考えた方が簡単で、有効で、足が早いです。

 

アイディアが浮かばないのであれば、適当にそこらから背景をパクって、人物だけをオリジナルに育てれば一本書けます。

 

人物設定が、シナリオ作成の全てです。

 

尚、「北斗の拳」は、「Mad Max(映画)」のパクリです。公式でも正式にそう発言されています。

だからって、「北斗の拳」は駄作じゃないでしょ?

駄作どころか、歴史に残る名作です。

因みに、北斗の拳の創作手順は「Mad Max」×「カンフー」。

一つ一つだと模倣品ですが、掛け合わせるとオリジナルになります。(一般の経営論でも頻出の技法です)

「人物設定」を掘り下げただけで、歴史的な名作が生まれるのです。

 

 

まとめ

 

人物は、3人だけ、考える。

3人の「役割」を認識する

ストーリーはパクって問題なし。人物で勝負!

 

まだまだ書き方の引き出しはありますが、奥義はこれです。

基本こそが、最も重要です。