ストーリーを作る前に読んでおくべき【おすすめ専門書】 死体は語る(上野正彦)

 

おすすめランク A  

こんな人にオススメ ⇒ ミステリー、探偵物が好きな人。映画やドラマの小ネタ考察したい人。

知識 3.5
内容

3.5

重要度 4
読みやすさ 5
総合評価   79  

【概要】

あなたにも死者のメッセージが聞こえますか?

法医学入門のバイブルとなった大ベストセラー。

偽装殺人、他殺を装った自殺、猟奇事件…。どんなに誤魔化そうとしても、もの言わぬ死体は、背後に潜む人間の憎しみや苦悩を雄弁に語りだす。

その死者の声を聞き、丹念に検死をし、解剖することによって、なぜ死に至ったかを調べていくのが、監察医の仕事である。

浅沼稲次郎刺殺事件、ホテルニュージャパン火災事件、日航機羽田沖墜落事故等の現場に立会い、変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、ミステリアスな事件の数数。
テレビドラマ『監察医 篠宮葉月 死体は語る』シリーズの原作にもなった、話題の書。

(アマゾン公式より 解説・夏樹静子)

読んでおくべきシリーズ、第一弾です。

 

突然ですが、

なぜ、物語には「恋愛」や「バトル」が多いのでしょうか?

 

A 誰もが持っている知識だからです

想像とは、経験や体験を含む「知識」の中からしか生まれません。

似通った知識を持つ人同士では、似通ったものしか書けません……ということ。

 

読者も同じです。

自分の知識の話は面白く感じませんが、自分の知っている範疇の話だと面白く感じます。

有意義な読書体験、執筆を行うには「知識」は必要だという事です。。


「じゃあ、医者しか医療物は書けないの?」

「サッカー選手しか、サッカー物書けないのか?」


A そうですよ。

その人達がちゃんと映画を勉強して、文学を勉強して書いた方が面白いに決まっているのですが、そういう専門家の方々は忙しいのので、物語を作ってくれないというだけです。

 

事実、しっかりとした知識を持った方が、ちゃんと読みやすく執筆を行ったら、ヒット作になります。

 

代表例が、本書「死体は語る」です。

日本法医学の第一人者、20,000体以上の検死に関わってきた監察医(スペシャリスト)が書いた体験談は、私が人生で読んだ数々のミステリィ小説よりも面白かったですし、衝撃を受けました。

 

「もう、ミステリィいらんな」

 

読了後に、このように感じる方が続出すると推察しております。

その衝撃を、体験してみてください。

 

只、それ以上に、作者、読者双方にとって「最低限の知識」があると人生を有意義に過ごせると矜持してくれます。

読書の際のポイントは三つ

 

 
名探偵
ポイント① ミステリィを書くにも読むにも必須だね、法医学は
 
名探偵
ポイント② 一歩先を行く、映画の見方に辿り着くはずさ
 
名探偵
ポイント③ これは全て、現実の話なんだよ
 
 

では、ポイント①から見ていきましょう!

 

 

ポイント① ミステリィを書くにも読むにも必須、それが法医学  

本書を読み始め、初めのエピソードは直ぐに読めてしまうと思います。

文章がとても滑らかで読みやすい、その上、実在した事件の回想録という点でも興味を引き、あっという間に読めてしまうはずです。

そこで、こう感じるはずです。

 

あれ? これ、推理小説なの?

 

一般的に想像されている「監察医」は、刑事に「死亡推定時刻は?」と訊かれて解答する役回りです。

そう、「推定」なんです。

推定を割り出すまでに、数々の「経験」「知識」「考察」を巡らせて結論へ辿り着きます。

そして、この一冊を読み終えた頃に感じるはずです。

 

私の思っていた探偵って、この人達かも!

 

監察医とは、知識において「事件を推理」し、証拠を持って裁判」を決定づけるので、我々の良く知る「安楽椅子探偵」のイメージに酷似する業務は、監察医なのです。(そういう側面が強い)

実際、本書はテレビ東京でドラマ化されてヒット作になりました。

推理小説、刑事物、映画ドラマで扱われる知識も、多くが「法医学」を元に作られています。

私が初めに上野先生を読んだのは↓ですが、

「いつ、どこで、誰と、どのように」を順を追って説明されています。

正に、推理小説を読んでいるのと同じ手順で進みます。(勿論、それを狙って執筆されています)

 

ミステリィ書きたいけど、どう書けばいいか分からない!

 

そんな方は、一先ずはこの辺りを読まれたら、明日にでも書けるようになります。

巷に溢れる「ミステリィの書き方」みたいな入門書を読むより、遥かに速く、多くの知識を得られます。

 

別に、書きたいと思ってないけど?

 

って方。

貴方も、読むべきです。

なぜなら……

 

ポイント② 死体の扱いは、どんな作品でも登場する  

 

例えば、

刀で切られた相手から血が噴き出るのは、なぜでしょう?

 

例えば、

腹を刺された男が抑える腹に滲む血が、「紫」なのはなぜでしょう?

 

例えば、

服を着た死体が川で浮いているのは、なぜでしょう?

 

知らなければ、気にせずに読みます。

知らなければ、気付かずに作成してしまいます。

因みに上の三つの理由は「動脈を切られたから」「静脈を切られたから」「倫理規定があるから」です。

 

真っ赤な血が噴き出ていればショック死しますので、その後ダラダラと名言を綴る暇はありません。

静脈でしたら可能です。数分は生きていられますし、死亡しない事も多いですので、じっくり名言を語れます。

服を着た死体は水面に上がりませんし、あがった場合は裸になります。でもそれは倫理上NGだから服を着せます。

 

こういう情報を無視している作品は多いですし、忠実に守る作品も多いですし、守っているのに破っているのはそれ以外の理由があるからです。

 

この様な観点持った上で映画やドラマを観ると、情報量が全然違います。

ボケっと眺めるだけでも勿論娯楽としては正解ですが、貴重な時間を使って観ているのです

一歩先行く観劇、その体験もして欲しいなぁと思う分けです。

 

もっと面白く、もっと興味深く、もっと豊に物語を観るコツの一つです。

 

ポイント③ 現実という臨場 

 

推理物、とは決定的に異なるのが、現実で起きた事件だいう点。

現実に私にも起きる可能性があるという点。

 

物語は、どこまで行っても物語です

 

我々は、異世界転生なんかしません。

宇宙の旅もできません。

波動砲も使えなければ、神様も降臨しないのです。

 

架空が、現実を超える緊張をもたらすことは、ありえないのです。

(これについての賛否は、いつか「哲学入門パート2」「サピエンス全史」とかで話します)

 

架空世界を、絶対安全圏から眺めるだけの薄い刺激に飽きてきた方は、一度、現実に触れる書籍を読んでみると良いです。

満たされていなかったモノが何だったのか、理解できるかもしれません。

現実という臨場感は、何よりも恐怖を抱きますし、共感も生みます。

特に上野先生は「一般読者を意識して」執筆されていますので、入門として読むには最適だと思っています。

 

 

最後に

このブログの目的の一つに、「物語の書き方」があります。

他のライターさんはそうじゃないでしょうが、私は目的にしています。

その上で断言します。

 

「アイディア」の大前提は「知識」です。

 

知識が無い人は、アイディア初級レベルを突破できません。

何も司法試験、医師試験を突破できるほどとは言っていませんが、最低限は必要です。

無いと、文字通り「話にならない」です。

逆に言えば、知識、つまりは読書量だけでアイディア初級は余裕で突破できます。

 

「在宅ワークになって通勤時間減ったし、無料サイトで小説でも書いてみるか!」

 

って思っている、そこの貴方!

その執筆時間、読んだ方が早いですよ。

最低500冊は読みましょうね。

それの在る無しで、苦しい思いをしなくて済みます。

 

【追記】

↓ネタに困らない限り記事では書かないので、ここでご紹介。

所謂、「プロファイリング」を世間に広めた大ヒット作品。

犯罪心理の概要を知るには良い図書です。

こういう図書は数多にあるので、100冊くらい読めばどこかの賞に引っ掛かるようなミステリィくらい、簡単に書けるようになりますよー、きっと。