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おすすめランク B+
こんな人にオススメ ⇒ あまりドロドロしない爽快不良物! SFあり。白髪最強ちびっ子あり
ストーリー | 3 |
構成 | 3.5 |
画 | 3 |
キャラクター | 3 |
総合評価 75点 |
あらすじ
2017年。26歳のフリーターとして底辺の生活を送っていた花垣武道は、中学時代の彼女だった橘日向が暴走族東京卍會(東卍)の抗争に巻き込まれ死亡したニュースを目にする。
翌日、バイト帰りに何者かによって電車のホームへと突き落とされた武道は、轢死を覚悟した瞬間に人生の絶頂期だった12年前の2005年にタイムリープする。
地元の一大暴走族だった当時の「東卍」を変え、日向の死を覆すべく、武道は東卍へと入隊するのであった。
(ウィキペディアより一部抜粋)
7月10日から公開されている「東京リベンジャーズ」。
不良物ですので、格好いい男の子が沢山出演するのでしょう。


と、言いたいところですが、いつもの不良物とは少し毛色が異なるので、まとめておきます。
「この話のここが」「このキャラクターのここが」みたいな内容の話は、ほぼしません。(いつもですが……)
構成をみていきます。
作者
その前にチラっと作者紹介します。
作者は和久井健 氏。
代表作は「新宿スワン」
歌舞伎町に実在したスカウト会社をモデルに描かれた、アンダーグラウンド作品。
作者ご本人の実体験がベースにあるとの事で、リアルとファンタジーの狭間を動く作品です。
という事で、本作「東京リベンジャーズ」の不良物もお手の物か?
この時点で期待が持てます。
では本題。
【SF×不良】
本作の最大の特徴が、ここ。
タイムリープ
タイムリープとは、自身の魂が過去の自分に戻る、遡るなどの超常現象の事で、SF作品では定番中の定番です。
有名どころは、「タイムリープ」という言葉の発案元でもあるコチラ。
【時をかける少女 (筒井康隆)】
また高度な読者IQを求められるコチラ
【タイムリープ 高畑京一郎】
タイム・リープ<上> あしたはきのう【電子書籍】[ 高畑 京一郎 ]
最近でのヒット作ではコチラ
【君の名は 新海誠】
他にも多くありますが、海外よりも特に日本で多い作品形態といえます。
また、SFというのは舞台装置が大がかりで映えるので、色々なジャンルと掛け合わされます。
SF×恋愛 SF×バトル なんて無数にありますし、架空ファンタジーと仮想現実(SF)も相性が良いので度々混ぜられます。
只、SF×不良 は、なかなかに珍しいですね。
出されてみると、穴場だった! と気づかされる良設定です。
なぜ、穴場だったのでしょうか?
タイムリープの既知概念と、不良の青春
タイムリープといえば、「過去に戻る」。
これが、不良との相性が悪いと思われていたのでしょう。(思っていました)
例えば、SF×バトルの作品で【All You Need Is Kill 桜坂洋】。
厳密には、コチラはリープではなくループなので、何度も負けては、何度も攻略方法を探していくという内容です。
もう一つ、【時をかける少女 アニメ版 細田守】
時をかける少女 Blu-ray【Blu-ray】 [ 仲里依紗 ]
こちらも自分の都合の悪い現状になったら、過去に戻ってやり直します。
こちらはリープ。
リープにせよループにせよ、「やり直しができる」のがリープ関連の作品構造。
これが、不良には相性が悪いです。
不良物の最大の見所は、喧嘩と青春。
どちらも一度切りだから白熱しますし、緊張しますし、感動します。
なので、そもそもリープさせる必要が無かったのが不良物なのです。
はい、頭が固かったですね。
過去に戻ったからといって、過去とかけ離れた人生を歩めば、それは現在進行形と変わらない。
本作はこれなんです。
過去に戻っているのに、過去に起こるイベントが全て初体験なんです。
これを強調させる設定も付与されています。
「過去はちょうど12年前にしか行けない」
今が7月12日だと、戻れるのは12年前の7月12日のみ。
つまり、同じ過去を二度繰り返せない。
ここで手を止めるのが、普通の作家陣営。
「繰り返しもできない、過去も辿らない……。じゃあ、初めから過去スタートでいいじゃん。リープとか意味なくない?」
そうなんです。物語の本質だけで考えると、リープさせる意味はありません。普通に中学生からスタートにして、現在進行形にした方が観やすいです。
なのに、なぜリープさせるのか?
短編で収めるため
リープ系の最大の見所は、リープした事で未来が変化するところ。
本作「東京リベンジャーズ」も、ここを見所にしてあります。
リープして過去を変えたことで、現在に戻ってくると生活が変わっています。
そして再度お題が出てきて、また過去に戻ります。
一度、話をリスタートさせています。
区切りを付けられるのです。
ココが重要!
確かに、リープ後の現代が変貌するのも魅力的ですが、それ以上に、回の度にぶつ切りにできるメリットの方が大きいです。
昨今の漫画の傾向ですが、長編が少ないです。
長編よりも、密度をあげて短期集中の作品が多くなっています。
単にこれは時代の流れで、他の媒体もそうです。
毎週必ずテレビの前に座り1時間拘束されるドラマより、好きな時間に好きなだけ観られるYouTubeが流行っています。
書くのも読むのも時間がかかるブログより、画像だけ載せてイイネ!するインスタやティックトックが流行ってます。
本作もそうで、現代に戻り「お題を獲得」→ 余計な日常や前置きを飛ばしてすぐに本題へ入る。
展開がスピーディで余計な物を省いているところが、現代に適合するのだと思います。
これを可能にしているのが、タイムリープでの場面切り替えです。
物語という本質的には不要かもしれませんが、時代に添うマーケティングの為には必要で、ここの着眼点が冴えています。
ガチSFではない。ところが良い
さて、こうしてSFを述べていますが、多くの方が文章を読んでいないはずです。
もう、こういうネチネチした蘊蓄が合う時代じゃないんです。
先ほど述べた、時代に添う、に真っ向から反逆いるのが私のような屁理屈オジサンです。
本作は本質的には、SFは不要です。
が、展開を早めるギミックとして利用されています。
これくらいが丁度良い。
これくらいで収めているから、読みやすいのです。
特にSFは苦手とする女性が非常に多く、ここも不良と相性が悪かったところですね。
本作は別にSFメインじゃないので嫌悪される方は少ないはずですし、存分に不良イケメンを愉しめる作品になっています。
だから、映画になるのです。
メディアミックス
先日から映画が公開中です。
アニメも放送中です。
(U-NEXT)
ブツ切れしている話だから、得られた波及効果。
映画もアニメも無限の放送時間を確保できませんので、明白な区切りがつく作品は扱いやすいでしょうね。
白髪イケメン、最強
内容にも少し触れておきます。
このブログで何度書いたか……。
イケメン最強は「ベタ無し白髪」
トレンドですね。
本作においては、ほぼ全てのキャラがこれ!
(白髪というより金髪なのでしょうが、ベタ無し白髪は事実)
そしてちびっ子イケメン白髪が最強!
キルア(ハンター×ハンター)を継承する最強さんは、本作でも登場。
この流れはしばらく続きそうなので、キャラデザに迷ったら、一先ず、ちびっ子白髪を書いておくと良いでしょう。
その他キャラクターも概ね女性を対象としたデザインになっていますので、ここでも売れる要素を確保されています。
まとめ
こうして細かくみていくと、かなり盤石な作り方になっています。
基本ストーリーはあっさりしていて、今までの不良物のような泥臭さがなく、デザインも女性向け。
でもSFという男好きな仕掛けもある。
捨て所が無いです。
安定して面白くできるパターンが出来上がっているので、続けようと思えば続けられますし、終わらせようとすれば終われるし、作者にとっては有利状態ですので、今後如何様にでもなる作品かと思います。
この状態で、この先、何を読ませてくれるのか?
今後も期待がもてそうな作品で、評価は高めでした。