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おすすめランク A
評価点 80点
昭和の名作「おそ松くん」。あの六つ子が……イケメンになって? イケボになって?
んにゃ! ニートになって帰ってきた!
赤塚不二夫生誕80周年記念作品。
一次的なイベントのはずが、奇跡の大ヒット。個性豊かな六つ子フィーバー!
当ブログにおいて、今後最も記事数が増えないであろうカテゴリー
アニメ!
当初こそ「ウマ娘」を二連発したものの、おそらく、かなりスローペースになります。
理由は明白です。
長い!
一回30分……最低でも全13話? オープニングなど飛ばしても20分。計260分?
長い!
何を言うとんねん。1クールくらい観れるでしょ? って思っているボーイズ&ガールズ達はさておき、無数の黒い企業にお勤めの方なら、この意味は御理解できるはずです。
そんな貴方に、オススメするアニメ。
それが「おそ松さん」
ブームから既に6年が経ち(21年現在)、3シーズン目も終わり、今更? 感が多いにありますが、今更語ります。
ここが凄いよ、おそ松さん!
今回もフランス人の私は、ポイントを三つに絞りました。
point① 一話完結。どころか数分完結。
point② バラエティの多さと、その完成度
point③ 周囲に話しやすい
では、個別に解説していきます。
point① 一話完結。かつショートショート。
サザエさんを舐めている若人は多いでしょうが、あのアニメ、ちょっと普通じゃ考えられない事をやっています。
毎週、二話作っています。
毎週二話ですよ。週刊誌だって毎週1話なのに、2話作っているんです。
それを、52年間やっているのです。
異常。しかも、日曜のゴールデンのフジテレビです。
あの枠のスポンサーになろうとしたら、どれほど大金積まなければならないのか……。
それに見合う作品を創作する義務を課されて、52年間、毎週2話作るとか、狂気です。
もっと踏み込むと、13話完結のシナリオ1本と、15分完結のシナリオ26本で、脚本家はどちらがキツイか?
んなの、明白に26本です。
1本作る以上は、そこに必ず「起承転結」を入れなければならず、この苦しみは短編だろうと長編だろうと同じなのです。
さて、この「おそ松さん」、1回に何本も入っています。所謂「ショートショート」という短編の中の短編ですが、観れば分かります。
短いからって、手抜きで作っていない!
一話一話が考えて作り込まれていて、とんでもなくクオリティが高いです。
第一話から観ていましたが(今は著作権事情で消去された幻の1話)、もうその段階からぶっ飛んだ手の込みようでした。
心配になりましたが、私の心配など、どこ吹く風……。
最後まで爆走のショートショートを繰り返し、ビッグヒットとなりました。
更に言えば、ノンストレス!
ストレスの一切を排除した作風ですので、気楽に「バカやってんな~」を傍観していれば良いのです。
・短編
・ストレスフリー
そもそもの「おそ松くん」、というか赤塚不二夫氏が生み出したスタイルが正にこの二点であり、赤塚イズムをきっちりと継承した、紛れも無いスピオフ界の巨塔となりました。
「アニメ? んなの長くて観れないよ!」勢の、そこの貴方!
どこで止めても、どこから再開しても、抜群のクオリティの短編が観れます。
通勤中に一話、寝る前に一話、朝のお通じに一話……。
そんな日常のひと時にうってつけのアニメです。
point② ハイクオリティの理由
この「おそ松さん」、兎に角、ストーリーのクオリティが高いです。
ちょっと構成の話をします。
シナリオの質を上げるには、二つしか方法がありません。
当たり前っちゃ、当たり前ですね。
では、最高の質を目指すには、どうすれば良いのでしょうか?
両方やる。
当たり前っちゃ、当たり前ですが、そうそう滅多にこれができる作品は現れず、稀に現れると軒並みブームを作ります。
本作「おそ松さん」で見て行きましょう。
深掘りしたのは「キャラクター」。特に、「六つ子の個性」でしょうか。
これは企画会議の段階であったはずです。むしろ、これをメインに本作は練られたはずです。
原作ではイヤミがピックアップされ過ぎたせいもあってか、「六つ子」は只六人いるだけで、独立した個性がありませんでした。
(因みに、これはこれで狙ってやっています)
同じ事をやるのであれば、リメイクする必要がない。
そう、赤塚先生ならばおっしゃるはずだ!
よし、全員に個性を出す!
「六つ子」を、主役に戻す!
だから、声優陣があれだけの豪華メンバーなんです。六つ子の担当声優さん、全員が現役の主役級です。
わざと、主役を揃えているのです。
只々、ヒット狙いでそうしたのではありません。
性格を全員変え、趣味趣向を作り、もっと言えば「なぜ、大人にしたのか?」も、これが理由です。
「子供から大人になったのだから、性格が変わっていても不思議ではない」と、する為です。
あらゆる諸設定が、「六つ子の個性」に直結するファクターとなっています。
が、ここで終われば、ヒットはしません。
これは、本当に上手いと舌を巻きました。確かに! って思います。
六人いるのだから、六通りストーリーが作れるのです。
個性重視にした結果の産物です。
でも、それだけじゃヒットしません。
メタフィクションのオンパレード!
あらゆる作品、ジャンル、構成、お決まりを、パクリまくります。おかげさまで、一話目が放送禁止になりました!
六通りのキャラの上に、更に、あらゆるジャンルのパロディを被せて行きます。
ここで一つ、注意点。
パロディを作るには、相当に、そのジャンルに精通しなければ作れません。
はっきり言いますけど、このレベルのアニメ作品に参加できる作家さんなら、「パロディ」を作るよりも「オリジナル」を作る方が楽です。
パロディやメタフィクションって、かなり細かな知識を要求されます。
「こういうネタにしよう」までは簡単なのですが、実際にシナリオにする時には、片っ端からそのジャンルの作品を観直さなければなりません。
この作業が、かなり辛いです。体力勝負になります。(こんなのやるくらいなら、オリジナル作った方が楽です)
その質のパロディを「ショートショート」でやるのです。
こいつら(制作陣様)、どうかしてんじゃない?
って、本気で思いました。当然、誉め言葉です。
あらゆるジャンル、あらゆる角度での笑い、感動、パロディを、全力で研鑽しているのが、本作です。
根っこの「キャラクター」を徹底追及し、それでも手を緩めずに「多面的に展開」する。
この双方を、ここまでやり切った作品は、近年では見ないです。というか、常人ならくたばります。
只でさえ暗黒街のアニメ業界を、更なる暗黒世界へ導いた傑作。
ブームになる絶対的なクオリティをもった傑作です。
尚、私の評価点「80」以上は、時代を変えるレベル、という点数です。
変えたと思います。
本作以後の人間達にとって「おそ松」は、「くん」ではなく「さん」になるのは、間違いないでしょう。
point③ 周囲に話しやすい。
長くなったので簡潔に。
昨今の作品って、アニメに限らず漫画でも「説明し辛い」ものが多いです。
複雑にし過ぎです。
ここへ釘を刺したのもまた、本作です。
・キャラが可愛いから。
・バカやってるのが面白い
・声優が豪華
・パロディ最高
どのポイントであれ、簡単に周囲に話せます。
加えて「おそ松くん」という地盤が既にあるので、アニメを観ない年配者にも話が伝わります。
子供が親に話せる。親が、それを理解できる。親が、その親にそれを話せて、その親もそれを理解できる。
もっと言えば、「ニュースに取り上げられやすい」ので、波及効果が凄まじかったですね。
本作のヒットは偶然ではありません。
必然です。
しかも、その要素の大半が「努力」という、血なまぐさくて、一般理解の得やすい経過があったからです。
「楽に稼ぐ」が主体になりつつある昨今の社会情勢の中(週休二日強制とか、有給取得強制とか、在宅ワークとか)、あからさまに血の滲む努力を見せつけてきた本作は、正に昭和の血を受け継いだ、時代への反逆児でした。
それこそ、赤塚不二夫の目指したものだった……、のかもしれないですね。