↑こちらがビッグガンガン版
↑こちらがサンデージェネックス版
小説投稿サイト「小説家になろう」発のライトノベルがコミカライズされた今作品。
中華風のファンタジー世界を舞台に、後宮の下女となった猫猫(マオマオ)が薬の知識を生かして様々な難題を解き明かします。
2017年、同時期にスクウェア・エニックス「ビッグガンガン」と、小学館「サンデージェネックス」でコミックの連載が始まりました。内容はどちらも原作通りですが絵柄が違うので読み比べができるのもおもしろいところ。
展開が早いのでさくさく読めますよ。
【あらすじ】
宮中に名探偵誕生!?“小説家になろう”発のヒーロー文庫の大人気タイトル「薬屋のひとりごと」をコミカライズ!
中世の宮中で下働きをする少女・猫猫(マオマオ)。花街で薬師をやっていた彼女が、帝の御子たちが皆短命であるこという噂を聞いてしまったところから、物語は動き始める。
持ち前の好奇心と知識欲に突き動かされ、興味本位でその原因を調べ始める元薬屋の少女・猫猫(マオマオ)の好奇心が、宮中を動かす──…!?(公式HPより)
胸熱 | 3.5 |
胸キュン | 3.5 |
泣ける | 2 |
笑える | 4 |
売れ行き | 5 |
人気のあるマンガは猫も杓子もアニメ化にドラマ化の流れの中、アニメ化されることなく発行部数を伸ばし続けている数少ない作品。
ビッグガンガン版の方がサンデージェネックス版よりも売れ行きが良く、新刊が出ると瞬く間に売り切れてしまいます。
既刊もなかなか揃わないので、一気に読み進めたい方は書店で見かけたらすぐに購入することをおすすめします。
購買層
【ビッグガンガン版】
10~20代男女問わず。男性は30代の方も購入されます。
絵柄が青年誌向けで可愛く、男性向け。女性の官能的な描写もいいですが、宦官の壬氏(ジンシ)のキラキラ度もこちらが上です。デフォルメされたちびキャラに抵抗がない方はこちらをおすすめします。
【サンデージェネックス版】
20~30代の女性。男性で購入される方はまれです。
絵柄は女性向けでかなり淡泊。ストーリーは原作通りですが、セリフも描写もあっさりとしています。
トーンを多用する最近の絵柄が苦手な方はこちらをおすすめします。デフォルメキャラもでません。
- 猫猫(マオマオ)のライトな謎解き
- 現実とリンクする薬学の知識
- 毒薬を飲みたがる猫猫のマッドサイエンティストぶり
①猫猫(マオマオ)の謎解き
ある日、人さらいに誘拐されて後宮の下女として売られた猫猫(マオマオ)。
「露店の串焼きが食べたいなぁ」という冒頭のセリフから開始10ページで後宮に広まる「呪い」の噂話を聞かされます。
誘拐されたから家に帰りたくて泣くとか、宮廷を逃げ出すための策略を練るとか、そんなことは全部すっ飛ばして、あっという間に本題の「謎解き」に入るところが「小説家になろう」らしい構成です。
「なろう」慣れしていない私は、これが実際あった宮廷をモデルにして書いている謎解きだと思っていたのですが、のちに現代風の食べ物が出てきて「中華風ファンタジー」だと気づきました。
本題の謎解きですが、花街で薬売りをしていた猫猫が様々な薬学の知識を駆使して後宮で繰り返される謎の変死を解き明かすのですが、その解決ネタがほぼ「現代人の知識」です。
この物語の設定では、主人公と同等かそれ以上の知識を持っているのは後に登場する父だけですが、現代人なら常識として知っていることがほとんどです。
(続刊中のため他のキャラが出る可能性もあります)
いわゆる「知識チート」状態ですね。
謎解きものとはいえ、謎自体はあっさりとしたもので、どちらかというと毒薬を平気で口にする猫猫と周囲の挙動を楽しむ話です。
ミステリ慣れしている人なら謎と証拠品が提示された時点で種明かしに気づきます。
が、このマンガの肝はそこではないので謎解きはライトでいい。
肝は読者に「その謎、自力で解けた!」と快感を得てもらうことです。
これは「小説家になろう」発のストーリー全般に言えることです。
あわただしい日常の中で込み入った物語は求められず、ライトにさくっと快感を得て現実から離れたところでストーリーにふけりたい。
なんだったら自分が解いてやろう、その謎を、と読者に言わせてくれるのがこのマンガはうまいです。
「なろう」設定はよくわからないけど、ちょっとライトめなミステリから読んでみたいという方にもおすすめです。
⓶現実とリンクする薬学の知識
これも一般的な知識がほとんどです。
(若干ネタバレ要素を含むので本編未読の方はご注意ください)
〇おしろいに使われている成分が幼児に影響すること。
現代に生きる女性なら乳幼児の世話をするときは化粧を避ける人も多いが、この世界にはそういった観念がない。
〇「可可阿(カカオ)」なる実に「牛乳」「乳酪(バター)」「砂糖」「蜂蜜」「蒸留酒」などを加えて練り合わせ、「功克力(チョコレート)」なる媚薬を作る。
↑わたなべはここでやっと中華風ファンタジーだと気づきました。遅い。
〇衰弱する妃の体に残った毒を排出するため、食事の改善を行う。
現代ならそりゃそうだろうと常識に近い献立。
〇蜜柑の皮に血行を促進する効果があり、生姜には体を温める作用があるのでこれを溶かして飴を作る。
ついでに温めた石を懐に入れるという日本古来からありそうな豆知識←戦国武将もやっていた。
〇青魚やそばなど、アレルギーの知識。
〇銀食器に細かい粉をつけて簡易指紋鑑定を行う、など。
こういった現代人の基礎知識的なことを中華風ファンタジーに織り交ぜ、謎解きに利用しています。
小難しいトリックの解説を読む必要がなく、自前の知識でほとんど解決できてしまうので20~30代の人には「自分もそれ、できる」という優越感があるし、若い人には新鮮です。読者層にうまく合わせた戦略です。
③毒薬を飲みたがる猫猫のマッドサイエンティストぶり



ふぐの内臓入り粥も食べたがってるよ

自分の体を実験台にして薬の効用を試したい猫猫の狂科学者(マッドサイエンティスト)ぶり。これがとても面白い。
毒を腹に入れたがる猫猫の挙動を読むたびに「いや、それ死ぬやつやん」とツッコまずにいられません。
特にふぐの内臓は……ほんまに死ぬで。
他にも頭の中は薬のことばかりで壬氏(ジンシ)のキラキラビームが全くきかず、いつの間にかちょっといい仲になっていたり、
女官たちから「不憫な子」扱いされたり、
ある一件の際に毒物をもって脅したため恐怖の目で見られたり、
猫猫の思惑の外で人々が勝手に推測しているのも面白いです。
まとめ
「小説家になろう」発のコミックには売れる理由がある。
小難しい知識はいらない。ただ楽しめばよい。
そこのあなたも名探偵になれるかもしれない!
「薬屋のひとりごと」のコミックを買い求めに来られる方は、コミック売り場の法則を知らないライト層の読者さんがとても多いです。
推測ですが、こんなルートでコミックにたどり着くのかなあと。
友達から「薬屋のひとりごと」という面白いマンガがあると教えられて、「小説家になろう」というサイトで原作小説が無料で読めると聞き、面白かったので書店で探してみたが見つけられず、売り場でうろうろしている店員に聞いてみた←わたなべはここ。
書店でコミックを探すコツは以下の手順です。
まず売り場は大きく5つに分けられています。
- 少年コミック
- 少女コミック
- 青年コミック(←「薬屋のひとりごと」はここ)
- レディースコミック
- BLコミック
その次に出版社別に分けられています。
- 集英社
- 講談社
- 小学館(←サンデージェネックス版はここ)
- 秋田書店
- スクウェア・エニックス(←ビッグガンガン版はここ)
- KADOKAWA
- その他
そこからさらにレーベル別に分けられ(多くは掲載されている雑誌やWEBサイト名)、最後に作家順に並べられています。
「小説家になろう」発のコミックのように「原作」「キャラクター原案」「構成」「作画」とたくさんの名前が並んでいる場合は「作画」した人の名前順が多いです。
ビッグガンガン版が欲しい人は青年コミック売り場「スクウェア・エニックス」の棚、ビッグガンガンの「ねこクラゲ」さんを、
サンデージェネックス版が欲しい人は同じく青年コミック売り場「小学館ヤングコミック」の棚、サンデージェネックスの「倉田三ノ路」さんを探してください。
小説版が欲しい人はライトノベル売り場の「ヒーロー文庫」、作者「日向夏」さんのところに並んでいます。
原作は2021年現在、「小説家になろう」にて連載中で無料で読めるようです。
表紙はそれぞれこちら。
買い間違いのないように電子書籍等で試し読みしてから書店に足を運んでくださいね。
↑ビッグガンガン版
↑サンデージェネックス版
↑ライトノベル