書店員が本音で選ぶ【おすすめマンガ】ましろのおと

   おすすめポイント

2021年春よりアニメがスタート!

音のないマンガで描かれる津軽三味線の世界が、ついに音となって作品を彩ります!

個性豊かなキャラクターが奏でる音楽と生き様

今追いかけたい注目の作品です。

 【あらすじ】

津軽三味線を背負い、単身、青森から東京へやってきた津軽三味線奏者・澤村雪(さわむらせつ)。

師でもあった祖父を亡くし、自分の弾くべき音を見失ってしまった雪だが、様々な人々と出逢いながら今、自らの音を探す旅を始める。

羅川真里茂が贈る唯一無二の津軽三味線×青春ストーリー!(公式HPより)

 

胸熱 4.5
胸キュン 2
泣ける 3
笑える 3
売れ行き 4

2012年に第36回講談社漫画賞少年部門を受賞、第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門にて優秀賞を受賞した今作品。

20巻を過ぎたあたりから売れ行きが鈍っていましたが、アニメ化に伴い欠品が目立つようになりました。

お得な三巻パックは発行部数が少ないので、見つけたら「買い」ですね!

 

購買層

10~30代女性。時おり同世代の男性も。

作者(羅川真里茂)の代表作が「花とゆめ(白泉社)」で連載されていた『赤ちゃんと僕』『しゃにむにGO』等の少女コミックのため、固定ファンは女性が圧倒的に多いです。

今回は「月刊マガジン(講談社)」で連載されていることもあり、男性向けの描写もたくさん。

男性も楽しめますよ!

 

  読みどころ
 
  1. 青春×津軽三味線
  2. 迫力のある演奏シーン
  3. 読めなさそうで読めちゃう津軽弁

 

①青春×津軽三味線

読む人
ねえ、津軽三味線ってなに?
わたなべ
撥(ばち)持ってべんべん弾くやつでしょ
 
読む人

普通の三味線とちがうの?

わたなべ
えっ……ちがうの?
読む人
違うんじゃないの? 誰に聞いたらわかるかな?
わたなべ
それは私が知りたい

この作品の最も高いハードルは「津軽三味線とは何か?」です。

楽器の経験がある人でも「津軽三味線と普通の三味線の違い」について解説できる人は少ないと思います。

それを鮮やかに解決してくれるのが序盤の青春編です。

 

物語は主人公の雪(せつ)が自分の弾くべき音を見つけるため、故郷の青森を飛び出して東京に向かうところから始まります。

導入部分では「津軽三味線は太棹(ふとざお)」「お座敷でチントンシャンと鳴らすのは細棹(ほそざお)」という説明のみ。

強烈な個性をもつ母・梅子によって東京の高校に編入させられた雪は、「津軽三味線愛好会」の朱里に頼まれて祖父の即興曲「春暁」を披露します。

 

二巻の巻末で津軽三味線愛好会に入部することになった雪。

集まったメンバーは誰もが初心者のため、三巻に入ってようやく「津軽三味線が何なのか」が初心者目線で語られます! 

そしてこの下りで雪は三味線の譜面が読めないことがわかり、ビビります。全部耳コピで習得したわけですね。

 

同時に、「一般的な三味線(細棹)」を弾けるオネエキャラの雷(らい)先輩が登場し、「津軽三味線(太棹)」との弾き方の違いがはっきりわかるようになります。

 

母の梅子が主宰する「津軽三味線甲子園」に出場することになった雪は、個性的な仲間たちと共に、一から自分の音色を模索する日々を送り始めます。

 

元々、青春マンガをたくさん連載されていた方なので描写はピカイチ!

おそらく2021年春スタートのアニメの山場は津軽三味線甲子園になるのではと思います(2021年5月時点)。

 

 

⓶迫力のある演奏シーン

紙媒体のマンガで音楽ものを描く難しさは、聞こえない音をいかに再現するか、に尽きると思います。

この作品はそれが素晴らしい。

耳慣れた「ドレミ」等の音階は一切使いません。

撥で三味線の胴を叩く衝撃や指でつま弾く弦の震え、奏者の心理描写や聞き手の感情を交えながら「じょんがら節」や「さくら」を奏でます。

 

この描写がさすがベテラン作家さん。

津軽三味線を弾く雪に見える故郷の海や、雪深い冬の厳しさが、実際にその光景を見たことのない私たちにも伝わってきます。

こればっかりはもう……マンガ読んで! 体感して! としか言えない!

 

アニメでは実際に雪が弾く「じょんがら節」や、兄・若菜との「即興曲」が聞けるようです。

月刊マガジンのHPにたくさん動画がアップされているので、聴いてみてください。

じっちゃんの「春暁」、そしてこれから生まれる雪の「即興曲」もいつかは聞ける日がくるかもしれません!

 

現役の津軽三味線奏者である吉田兄弟の演奏も聞けますので、ぜひ。

 

 

③読めなさそうで、読めちゃう津軽弁

冒頭から津軽弁全開です。

マンガだと漢字があるので、絵と合わせて何となく意味はわかるものの、津軽弁の応酬が始まるとなんのことだかわからなくなります。

 

注釈もあるんですけど、ほんとに必要最低限です。

 

「ズナられるべよ」
「あのほんつけなし!」
「みったぐねえ」

 (コミック1巻より)

 

上記の雪や若菜ちゃんはまだマシな方で、じっちゃんはもっとわからない。

 

「我だっきゃのぉ春が好ぎだ
 んだども冬が嫌いなわげでね 
 まんず津軽の冬はしばれるっきゃの
 お天道さん出で
 わんつかずつ雪っこ解げで……
 音(おど)が変わる」

 (コミック1巻より)

 

最初は読むのが大変でしたが、不思議なもので巻を進めるごとになんかわかったような気になるんですよね。

注釈がないから自力で理解しようとするのか、恐るべし津軽弁パワー

 

アニメでも雪が低く静かな声で津軽弁を話します。

他のキャラクターたちがどんな声色で津軽弁を話すかも見どころ(聞きどころ)ですね。

 

 

まとめ

とにかくマンガを読んで、津軽三味線のすごさを体感して!
そして、実際の音も聞いてみて下さい!

 

 

    書店員 ウラ話

「ましろのおと」は時々、特装版に演奏CDがついていることがあります。

15巻の特装版にはなんと吉田兄弟のライブ演奏が!!

うっ……買うか……どうするか! と迷っているうちに特装版は完売してしまい、今では手に入らないものになってしまいました。

コミックの特装版はほとんどが初回生産のみで数も少なく、発売日からひと月たたずに売り切れてしまうものもあります。

重版がかかることもめったにないので、手に入れるなら予約が必須ですね。

 

20年ほど前にHMVで吉田兄弟の生演奏を見たことがあるのですが、音の振動が半端なかったです。

バチンっ!と胴をひと叩きした瞬間のあの衝撃、マイクも使っていないのに肌で感じる音圧。

指が弦の上をこする音まで聞こえるような近距離で、みんな食い入るように聞いていました。

 

ああ~「ましろのおと」を読んだ今だから、また生演奏が聞きたいよ~と懐かしく思い出すのでした。


→ 月刊少年マガジン特集 「さよなら私のクラマー」(水谷遥)

 


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