映画【おすすめレビュー】レオン 完全版 

おすすめランク A

こんな人にオススメ ⇒ 個性的なキャラクター。独自の美徳と美観を観たい

ストーリー  
脚本  
映像  
キャラクター  
総合評価   85点  

 【あらすじ】

家族を惨殺された12歳の少女マチルダは、隣の部屋に住む殺し屋レオンに助けを求める。戸惑いながらもマチルダに救いの手を差し出すレオン。そこから2人の奇妙な共同生活がはじまった。やがて2人の間には父娘とも、恋人ともつかない愛情が芽生えていくが・・・・。
(「キネマ旬報社」より)

もう24年も前の作品になるのですね。今尚、人気のある不朽の名作です。

ふと思い返すと私の周辺で過去に好きな映画として「レオン」を上げた方が、軒並み女性であったと思い出しました。

最後に本作を観たのは、ビデオになった当初でしたので、23年も前です。ほぼ忘れていましたので、再度観て観てみたという流れです。

そして、あの頃の所感を明確に思い出しました。

「ロリコン映画だな!」

23年経っても、同じ感想になりました。とはいえ、当時よりも見る目は肥えていますので、なぜ「ロリコン映画」に見えたのか? また女性人気が高い理由も付随して解説してみようと思います。

では、まずは構成から。

 

 

 構成 

いつも通り、ハリウッド式の三幕構成ですので、大筋は省きます。

特筆すべき点は二つ。

・脚本が上手い!

・全てはキャラクターの為に!

まず一つ目ですが、脚本が上手い! 舌を巻きますね。脚本家志望の方は、これだけでも観ておく価値と必要性があります。

脚本の良し悪しは、最序盤(20分)で分かります。

基本、「10分以内に、物語の世界観」を「もう10分以内に物語の目的」を見せなければなりません。これが出来ていない作品に、脚本が上手いとは口が裂けても言えません。

本作は最初の10分で、主人公のレオンが優秀な殺し屋だと分かります。そして、仕事から帰ってくると、美麗すぎる少女マチルダが部屋の前にいます。(マチルダは、レオンの隣の部屋の住人です)

ここが、ぴったり10分です。

そして次の10分で、マチルダの家族が全員殺されます。この時、敵役のゲイリー・オールドマンも登場します。

ここが、ぴったり20分。この後、マチルダがレオンに助けを求め、二人の生活が始まります。

完璧ですね。この20分で、「暗殺者と少女」という物語の世界観と、「少女の復讐」という物語の目的、余すことなく全て書かれています。

それだけではなく、ここに出てくる行動や台詞は、後の全ての展開に関わる伏線で埋め尽くされています。

上手すぎ!

何一つ無駄がない脚本で、この導入だけで何度だって観れます。

只! 本作の素晴らしさは、こうした技法だけではありません。むしろ、こちらの方が重要です。

「キャラクター」を立てる。

はい。本作のキャラクターの★を満点にしました。無駄の無い構成ですが、ここから先、ちょいちょい無駄もあります。無駄というよりは、キャラクターの為の余白を取っていると言えます。

この余白を取る為に、至る箇所の無駄を削いでいますし、もっと深読みすれば、ナタリー・ポートマンの奇跡とも呼べる美しさ、ゲイリー・オールドマンのハリウッド史に残る名演があったからこそ、徹底した「キャラクター重視」の構成に踏み切れたのだと思います。

本作の構造的な特筆点は、兎に角、役者を生かす

だから、本作の登場人物は3人(厳密には4人)しか居ないのです

素晴らしい脚本、素晴らしい演者が揃っていて、駄作になんかなり様がない。

こうした「人物主義」である点が、女性ファンを釘付けにしたポイントではないでしょうか? 後、家具類とかの部屋、衣装のセンスが良いですし。

では本作の最大の魅力、キャラクターについて見ていきます。

 

キャラクター 

ナタリー・ポートマンの奇跡!

2000人のオーディションの中から選ばれたらしいですが、いやいや、よく2000分の1でこれを引き当てられたな! って感じです。

今回も、23年前に観た時の印象も、色褪せずに同じテンションで「美しい!」と叫べます。

特に、ファーストシーン。あの横顔! 

この子誰が作ったんですか? 神様? でしょうね!

私がスタッフなら、彼女のファーストシーンは死ぬ気で考えます。というか、彼女を生かす為だけに脚本を変えろと言われても、即答で「Yes!」と答えます。

どれほど素晴らしい脚本も、圧倒的なキャラクターには勝てません。キャラクターを立てるのに全てのスタッフが頭を抱えるのが常である世界で、この完成度の女優を見つけてしまえば、「キャラクター重視」に舵切りするのは当然です。

どう舵を切ったのかは、一目瞭然。

ゲイリー・オールドマンの素晴らしい演技。所謂「狂った敵役」ですが、全編通して然程多くない登場シーンで、あれだけの「狂い」を演じ、インパクトを根こそぎ持ってくのは、名演としか言えません。

ジャン・レノの「童貞臭い」「潔癖」の暗殺者も印象的で、名演です。

こうした実力者の名優の名演を両脇に抱えながら、その上を行く美貌! たった14歳の少女が、名優達を完全に食ってしまうというのは、奇跡としか言いようがありません。

彼女を見つけた瞬間から、この映画の行く先は決まっていたと思います。

如何に、彼女の美しさを表現するか?

その為に脚本を絞り、人物を絞り、屈しの名優たちをバンバンぶつけ、それでも尚、超えてくる彼女の奇跡を映像に残す作品です。

ナタリー・ポートマンご本人はこの(ロリという)表現を嫌っているようですが、間違いなく、20世紀最高のロリコン映画です。(ご本人は、ロリコンの語源「ロリータ」の出演を拒否されています)

私がこの作品後に感銘を受けた「美少女」と言えば、エマ・ワトソンのハーマイオニーですが、その時も心の中で「ナタリーの方が上。絶対」と言っていましたし、未だにあれを超える12歳(本人は14歳)は観ていません。

ゲイリー・オールドマン、ジャン・レノの名演も兼ね合い、映画において「キャラクター」が、どれ程重要なファクターを持つのか理解できる、名作でした。

脚本家志望の方、小説家志望の方も、絶対に観るべきです。

脚本とは、文章とは「キャラクター」を立てる為だけに存在していると、明確に分かる傑作でした。