文学おじさんのマイフェバリット小説 【晩年(太宰治)】 葉

(honto)


小説が少ないので、しばらく増やします。

急増します。

先日、村上春樹さんのマイフェバリット小説「坑夫(夏目漱石)」を話しました。

コチラ▶「坑夫(夏目漱石)」

 

今回は、私のマイフェバリット小説です。

 

太宰治 「晩年」

 

これを超える作品は、人生で出会っていません。

今後出会わないです。

確定してます。

 

16歳の頃に読んで、死ぬほど影響を受けたから!

 

「死ぬ」という言葉遣いがナンセンスと言われるかもしれませんが、当時の私の感性を根こそぎぶち壊されたので、それは一度自身がリセットしたのと差異ありません。

思春期に与えられる衝撃は後の人生を支配しますので、私の細胞分裂が逆行でもしない限り、本作がマイフェバリットから外れることはありません。

あまりに影響が強すぎるので、分割します。(記事数稼ぎではない)

 

本当に名作なので、死ぬ前に一度は必ず読んで下さい。絶対に、損しないです。

(というか著作権フリーの作品なので、青空文庫でゼロ円で読めますので、特しかありません)

 

※ 文章読むのが面倒くさい人向けに、youtubeでラジオ形式でやってます。

コチラ → youtube

 

晩年とは?

 

太宰治の初出版の作品集です。

14作品入っていますが、全て短編。長くても30ページもないので、読みやすいです。

同人誌時代からの傑作選になっており、この時点で、ほぼ完成されています。

 

原点にして頂点。

 

小説界の金字塔です。

というのも、太宰治といえば「人間失格」を代表作だと思っている方が多いです。

人間失格しか知らない人がほとんどかと。

 

ですが、「人間失格」が代表作になった大きな理由は、作者の自殺というセンセーショナルな話題があったからでもあります。

その前、デビュー時から自殺癖はありました。

デビュー時、すなわち、本作「晩年」で、すでにこれが触れられています。

今回の企画で取り上げる、

 

「思い出」

 

次回? 次々回くらいに取り上げる

 

「道化の華」

 

この二作が、極めて重要です。

「人間失格三部作」といってもよい、この二作を読まずして「人間失格」は完成しません。

どちらも「晩年」に収録されています。オトク

 

只、それがメインの作品集ではありません。

 

それ以外が、最強に面白いです。

最強に! 面白いです。

「人間失格」において「ギャグ書いて小銭を稼いでました」って出てきますが、その当時の作品も収録されています。

そう、もうデビュー作にして、人間失格に描かれている事は、全て収録されているのです。

故に、

 

原点にして頂点。

 

私が、人生で一作しか人に本をおススメできない! 呪縛をかけられたら、迷わず本作を選びます。

絶対に読んで欲しい作品集なのです。

 

 

一作ずつ説明します。

まずは、「葉」

 

んと、読まなくていいです(笑)

いや、読んで欲しいですけど、かなり難易度が高いのでツマズク人が多発すると思われます。

なんの難易度が高いのか?

 

一文で終わる話が数三十個入っている。ストーリーなし、前後関係なし、いきなり始まっていきなり終わります。

 

は? って感じだと思います。

意味不明……、って感じだと思います。

 

その感覚通り、意味不明です!

 

こういうところなんですよ。純文学イヤ! って人が多くなってしまうのも、こういう作品があるからなんですよ。

しかも、それが出鼻なんです。

この後の作品から、すっごく分かりやすい、すっごく楽しい話が続くのに、ここで、

 

「あ、敷居高いやつね。キャンセルで!」

って、閉じる人が多発するんです。

であれば、読まなくていいです。

ここで閉じるくらいなら、読まないでいいです。

一応、これがどんな話なのか説明します。

 

メモ書きです。

 

小説を書く時って、頭の中にたくさんのモヤモヤがあります。このモヤモヤを表現したくて、人物を使い、ストーリーを使い、設定を使い、形を整えて行きます。

ですが、本当は「この文章だけ書ければいい」っていうのが、初めからあります。

これを登場させる為だけに、十万字、二十万字と装飾を施します。

 

太宰「そんな装飾、邪魔じゃね? 言いたい事だけ書いたら、どうなんの?」

 

こうなります。

太宰の印象に残ったシーンの抜粋文。それをひたすら羅列したのが、本作なんです。

前後関係なんか無視です。

いきなり始まって、いきなり終わります。しかも一文だけで終わります。

太宰を幹だとするならば、そこに沸いた一文は……、

「葉」

ってことですね。

学者、インテリ、文学マニアでも無い限り、まともに付き合うと怪我します。

サラっと流していいです。

 

只、なぜ本作が一番初めにあるのか? については、心のどこかに置いておいて下さい。

 

太宰が投げたいのは、直球です。

 

小説家は、いろいろと言葉の周りに肉付けしすぎです。勿論、自分(太宰)もそうです。勿論、生きている人間はみんなそうです。

本当は、これだけを伝えたいのに、色々と言い訳をつけてしまい、伝えたいことが全く伝わらない……。

そんなジレンマは、誰にもあります。

太宰は、そこにとことん悩んだ人間です。

 

もう綺麗ごと言うの、嫌なんだよ! 本心だけを言わせてくれよ!

 

それが、本作「晩年」のテーマであり、太宰自身のテーマでもあります。

だから、初めに、この作品が必要だったのです。

 

 

んん……、あかんは、コレ。

読まなくていい、とか言っている「葉」ですら二千文字……。

 

ごめんなさい。

本腰で書きたいので、細かく分けます。

次回は、早速山場「思い出」です。

確実に三千文字超えるので、次回に回します。