今日の読書【さいはての彼女】【ジョーカー・ゲーム】感想

簡潔レビュー。

全てネタバレあり。

 

【さいはての彼女 著:原田 マハ】

ジャンル:日常

あらすじ
仕事にも恋にも疲れた女性経営者が、現実逃避で向かった北海道。そこで偶然出会ったのは、ハーレー(バイク)に乗った少女だった。純真な少女と過ごす中で、無くしていた感情を整えていく。他三篇。

 

評価 B

 

 

ジャンルは不明です。今風の純文学、というかエッセイみたいな感じです。

短編集で四篇収録されていますが、基本構造はほぼ同じ。

「エリート女性サラリーマン(ないし経営者)が、現実に疲れて旅に出る」という内容。

近年は極端なイベントを発生させて衆目を集める作品が多いですが、本作は非常にゆっくりと内容も文章も流れています。

忙しい現実から抜け出したいというテーマがあるので、それにそって内容も緩やかになっているのでしょう。

とはいえ、長いという印象はありません。

文章が個性的で楽しく読めます

「情熱的な恋!」とか「恐怖におののく戦慄」とか、そいうのは皆無ですが、ちょっとした合間に呼んで疲れたサラリーマン同士で共感するような癒しはあります。

内容も短編集ですし、キャラ設定が全員似通っていますし、凄く読みやすい印象がありました。

それ以上に取り立てて説明する事が無い内容でしたが、それにも関わらず面白いと思える話でしたので、そのあたりは作者のセンスなのでしょうね。

作者の別作品も読んでみたくなる作品でした。

 

 

【ジョーカー・ゲーム 著:柳広司】

ジャンル:ミステリー

あらすじ
時は昭和12年。日本陸軍に謎の組織が設立された。その名も「D機関」。
特別に優秀な人間のみが所属を許され、過酷な訓練により化物として養成される。莫大な予算が掛けられた組織にも関わらず、その一切が「不明」とされている。
彼等の任務は「スパイ」。
国内外どこにでも潜伏し、確実な情報を持ち帰る、スペシャリスト達である。

 

評価 B+

 

累計120万部を誇る人気シリーズです。発売された時は衝撃でした。

「スパイとは一体何のか?」の解説から、職務の特殊性が説明されます。更に、その人材を要請する「D機関」出身者は、皆化物というファンタジーな設定が追加されたダークヒーロー作品といえます。

それにも関わらず、やっている事は「ミステリー」です。

昨今では当たり前になってきている「ミステリーっぽくないミステリー」作品の一つで、探偵やら刑事は出てきません(憲兵は出てきます)。

犯人を当てろ! というものではなく、「この謎を追って行こう」というタイプ。昔だとサスペンスに該当していたのかもしれないですが、近ごろはミステリーの主体となりつつあります。

私個人の評価だと「A」つけたいところです。凄く面白かったです。

只、読者を選びそうな内容なので「B+」にしました。

かなり男性向けです。多くの内容がスパイについての説明であり、説明の為に事件があったりします。人間ドラマが少なく、出てくるスパイが全員「化物」級の能力を持っているので、ピンチっぽいピンチも無いです。

特殊能力を持った人間が無双していく……感じに近いです。

更に、短編集、ショートストーリー連作で、前後作品に関連性もなかったりします。

或る意味では探偵物の短編ミステリーの形式だったりもします。(ホームズとかもそうですが、人間ドラマはほぼ無し)

しかも、大日本帝国時代の日本人の意識なども書かれるので、今の十代が読めるのか疑問です。

おじさん専用小説だとは思います。

が、そこにハマりさえすれば、文句なしで面白いです。最近は女性向けばかりでオジサン向けが少ないので、久々にガッツリおじさん向けを読んでみるのもアリだと思います。

因みに、アニメにも映画にも舞台にもなっています。

 

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只、原作読んでからの方がいいです。映像化するとストーリーがメインになってしまい、一番面白い「スパイとは何か?」が蔑ろにされるはずです(観てませんが)。映像化とはそういう事です。

ので、まずは原作がオススメ。たぶん別物です。