とりあえず、書いてみた。
でも、なんだかぐちゃぐちゃ……。
答えは一つ。
起承転結が定まっていないからです。
巷で良く聞く「起承転結」
学校で教えてくれない「起承転結」
色々な教本を読んでみたけど、いまいち分からない「起承転結」
そんな貴方へ贈る、【2時間(10万字)構成 テンプレート】。
こういうのは、模写してしまった方が早いです。
あくまでテンプレートなので、崩しても構いません。
映画では2時間ですが、小説だと120~150ページ程度です。
(コンテスト類は、ほぼこれだと思われます)
世の中に出回っているシナリオの9割がこれですし、崩したところで大した成果はありません。
構造を崩す時間があれば、人物設定の一つ、アイディアの一つでも考えた方が有意義です。
初心者は、まるパクりしてもらって構いません。
時間がある方は、これ以外の方法も考えてみてください。
小説で書く場合の目安のページ数 ※(小)と記載。
脚本(2時間映画の場合)の分数 (映)と記載しておきます。
累計の枚数、分数です。(10~20ページ、の場合、全部の枚数で20ページ目までに書きましょう、って意味です)
これはあくまで目安です。実際に書いていて多少の前後はあります。
また、このテンプレートは本来「プロット」、すなわち書き始める前に検討する事ですが、慣れない内はこれらを細かく考えながらプロットは作れないはずです。
作れたとしても、本文を書き始めると全く違う物語になってしまうはずです。
それでOKです。
推敲する時に使ってみてください。
【起①】設定説明
書く事→ 主人公の設定。世界観の説明。主人公の目的と苦難
(小)1~10ページ (映)10分以内
ページ少なすぎない? と思うかもしれないですが、この間で書いてください。書けない分はおいおい説明を付け足す形になります。(後でやればOK、ではありません。単純に、これは負債を抱えるだけです)
基本情報は全て書いてください。
世界観説明も必須です。
SFで宇宙船が出るなら、この間に出して下さい。魔法がある世界なら、魔法を放って下さい。恋愛なら、好きな人と出会わせて下さい。野球ならバット持たせる、サッカーならボールを蹴らせて下さい。
10分、10ページ以内です。正直、10ページ、10分だと遅すぎるくらいです。冒頭からナレーションで自己紹介しながら魔法をぶっ放す、一文目から好きな人と出会う、くらいでも良いです。漫画などは1ページ目の1コマ目でこれが出てきても「普通」の速度です。
ここまでは難しくは無いはずですが、次項を出来る人となると、急激に割合が減ります。
主人公の【目的】も書いて下さい。
人物紹介、世界観紹介で終わる方が非常に多いですが、最も重要なのはコレです。
主人公の目的。
この物語が、どこへ向かうのかは10分以内に説明しましょう。◀最重要ポイント
目的は「苦難」を作れば自然と説明できます。
(例)
【苦難】貧困 → 【目的】貧困から抜け出す
【苦難】モテない →【目的】彼氏ができる
【苦難】魔族が世界を蹂躙する →【目的】世界平和
再三述べます。
これも含めて、10分(10ページ)以内です。
この最序盤で書く事は、物凄く多いです。
小説とかでプロローグを付ける方が多いですが、不要です。プロローグを格好良いと思っているのは、作者だけです。
そんな事を書いている暇があるなら、主人公説明と世界観説明を書いて下さい。
【起②】一つ目のエピソード終了
(小)10~20ページ (映)20分以内
言葉やナレーションではなく、実際に動かして説明します。
20ページ、20分以内に1つ目のエピソードは終わらせて下さい。
最重要ポイントです!
このエピソードで、全力を出して下さい!
このエピソードで、作品の良し悪しの90%が決まります。
あらゆる物を駆使して下さい。
出し惜しみなんか無駄です。後からやろうと思う事は、もうここで書いてください。
凄い必殺技があるなら、もうここで書く。
強くて格好良い敵役がいるなら、ここで登場させて一暴れさせる(負けるところまで書く)。
恋の相手がいるなら、ここまでに一つエピソードを作る。
探偵物なら、一つ目の事件はここまでに書く。探偵物なら、ここで解決しても良いです。
兎に角、物語の中で一番面白いシーンは、ここで書く!
初めの20ページにどれだけの物を詰め込めたか? が、作品の評価に直結します。
で、重要なのでもう一度書きます。
ここまでに「ストーリーの目的」を書いて下さい。
絶対です!
本当は10ページまでに書くのですが、大目にみても、ここまでには書いて下さい。
なぜなら……
【承①】序盤の目的を達成させる
(小)20~30ページ (映) 30分以内
っと思う方が多いはずです。
っと思うはずです。
もう、です。
良いシナリオには、目的が複数登場します。一つだけの目的を達成しただけで終わるシナリオを「ワンアイディア」と呼び、駄作とされます。
ここで、一先ずの目的を達成させます。(だから、起で目的を書く必要があります)
ここでの達成度合いが高いと、良い物語といえます。
達成度合いが低いと、レベルの低いシナリオと言えます。
具体例に、先ほどの苦難で検証してみます。
【苦難】貧困 → 【目的】貧困から抜け出す →【達成】金持ちになる
【苦難】モテない →【目的】彼氏ができる →【達成】彼氏ができる
【苦難】魔族が世界を蹂躙する →【目的】世界平和 →【達成】世界が平和になる
【苦難】貧困 → 【目的】貧困から抜け出す →【達成】公務員試験に受かる
【苦難】モテない →【目的】彼氏ができる →【達成】彼が、自分を好きだと噂に聞く
【苦難】魔族が世界を蹂躙する →【目的】世界平和 →【達成】村一つを守る
【苦難】貧困 → 【目的】貧困から抜け出す →【達成】食料を調達できる
【苦難】モテない →【目的】彼氏ができる →【達成】彼と距離が縮まる
【苦難】魔族が世界を蹂躙する →【目的】世界平和 →【達成】ヒロインを守る
並べると分かると思いますが、達成度が高いほど、広い世界観になります。
もうここで目的が達成されたとあれば、次の目的、苦難を設定しなければならず、話も複雑になり奥行が出ます。
達成度が低いほど話の展開が遅く、三十分も使っておいて何も達成していないとなれば、このシナリオの最終的な完成度など高々知れています。
序盤終わりの達成度が、構造上の「面白さ」になります。
【承②】 次の苦難(プロットⅠ)
(小)30~50ページ (映)50分以内
シナリオの完成度とは、主人公が如何に大きな苦難を乗り越えたか(もしくは数多く挑戦したか)です。
ですので、次の苦難はもうこの辺りで出ないと遅いです。
が、ここの苦難はけっこう遊べます。
シナリオ全体の中で、最も自由時間です。
多くのシナリオは、ここで「読者、視聴者を愉しませる事」をやります。
例)
バトル物 → 修行シーン
恋愛物 → 三角関係の相手が登場。初デートなど
ファンタジー → マップの探索、政界情勢のアレコレ、魔法の原理などの説明
推理物 → 色々な謎を登場させる。ヒントになる場所の探索など
【承③】 次の苦難への準備
(小)50~60ページ (映)50~60分
なぜ、準備させるのか?
次の展開が、ストーリーの山場になるからです。
物語の丁度、折り返しで、何かを起こさなければなりません。
そしてそれは、このストーリー上、最も大きな事件にする必要があります。
ですので、その前振りはきっちり行います。
バトル物 → 敵役が暗躍、画策する
恋愛物 → 三角関係の相手と何か起きる(キスしてしまうでも、一夜過ごすでもOK)
ファンタジー → 世界に異変が起きる予兆
推理物 → 最も難解で不思議な事件
【承④】 ミッドポイント
(小)60~80ページ (映)60~70分
大事件はここで書きます。
ストーリー上、もっとも重要で衝撃的な事件を書く場所です。
感動系であれば、最も感動的なシーンや最も深い意味のあるシーンもここで書きます。
シナリオ上、この物語の折り返し点を「ミッドポイント」と呼び、視聴者が「ちゃんと観てくれる時間帯」とされます。
所謂ゴールデンタイムです。
よく「感動的なシーンとかは、最後にしたい」とか考えている方が多いですが、最も効果的な場所は「折り返し」地点です。
最も熱いバトル、最も奇抜な展開、最も感動的なシーン、最も作者の想いが詰まったシーンなどは、ここを山場に構成しましょう。
最後に出すとか、遅い!
(↑この感覚は非常に重要です)
【承⑤】 最後の苦難(プロットⅡ)
(小)80~90ページ (映)70~80分
概ね、先ほどのミッドポイントから引き継いでいるはずですが、ここで仕掛ける方も多いです。
というのも、ここが「苦難」を出せる最後のポイントになるからです。
特にテーマ性の薄いアクション物では、ここらでもう一つくらい事件を作っておかないと、ストーリーが尻すぼみする可能性があります。
ハリウッド映画などの三幕構成では、ここを【転】とするので、重要な領域です。
【転】 目的達成からの、新テーマ
(小)90~100ページ (映)80~90分
はい。
アマチュア小説の書評、添削を1年やっておりますが、95%の作品にはこれがありません。
というか、これがあれば大抵のコンテストで一次落ちは無いはずです。
逆に、転無しの作品では商品になりません。
転の作り方は奥義ですので、様々なやり方があります。(これはいつかご紹介します)
はっきり言って、難しいです。
これの在る無しがプロかアマかの違いなので、簡単ではありません。
只、王道のやり方はあります。
一度、目的を達成させる。
【承①】では、序盤の目的を達成させましたが、ここでは全体の目的を達成させます。
【苦難】貧困 → 【目的】貧困から抜け出す
【苦難】モテない →【目的】彼氏ができる
【苦難】魔族が世界を蹂躙する →【目的】世界平和
この状況にしてしまいます。
達成したはずなのに、それが序盤に想像していた未来図とは異なる! 状況にします。
再度、押しの事件を発生させるのです。
ここでの注意点は、ストーリーを全て観てきたからこそ、(視聴者にとって)納得のいかない状況を作るべきです。
(例)
貧困 → 金持ちになれたけど、想像していた幸福ではない。
恋愛 → 彼氏ができたけど、想像していた幸福ではない。
ファンタジー → 魔物から人を救ったのに、人から迫害される。
などです。
そしてこれが、【結】へと導かれます。
最も有名かつ優れた例が「シンデレラ」。
目的は「王宮の社交界に参加する」ですが、魔法が切れて元の世界に戻ってまう。
振り出しに戻る。 ←これが転。散々盛り上げておいて、ちゃぶ台返しでスタートに強制的に戻し、喪失感を与えます。
ですが……、と【結】のイベントに移行させています。
【結】 クライマックス
(小)100~120ページ (映)90~120分
予定していた目的とは異なるが、これをどうするか?
ここからは好きにやって良いゾーンです。
ここまで書けていたら、なんでもできるはずです。
貴方の書きたい事を書きなぐって下さい。
シンデレラのように、覚めたはずの夢が現実になるでも良し。
桃太郎のように世界を救うでもよし。
裏シンデレラ設定で、喪失感のあまり失意で自決する、でも良し。
裏桃太郎設定で、鬼を倒し賛美を得る快感を得てしまい、野盗になるでも良し。
何をしてもOKです!
カタルシスを解放せよ!
まとめ
はっきり言って、シナリオ作成は時間、ページとの闘いです。余計な事を書いている暇なんか、どこにもありません。
特にキツイのが「起」。
一文字たりとも余裕はありません。
だからこそ、【起】で、作品の良し悪しが評価されてしまいます。
逆に、クライマックスまできっちりと積み上げていれば、何をやっても許されます。
溜まった鬱憤を撒き散らすくらいで丁度良いです。
ほぼ分単位でタイムスケジュールを書きましたが、
と、思う方もいらっしゃるはずです。
やってます。
世界最高峰のハリウッドは、特に!
予算の関係で尺の長短はありますが、割合は同じです。
試しに、なんでも良いので一作、時間を計りながら観て下さい。
ほぼ全て、この構成です。
少なくとも、初心者の方は下記ポイントだけは覚えて、実行して下さい。
冒頭の良し悪しで、作品の良し悪しは決まる。冒頭に詰めるだけ詰める!
物語の折り返し地点に、最も良い場面を入れる。
なんとか【転】を考える。
この三点があるだけで、いっきにプロっぽくなります。
【起承転結】には他にも機能がありますので、それはまた中、上級編で書いていきます。