Amazon Primevideo
おすすめランク A
こんな人におすすめ ⇒ 競馬好き。アニメ好き。どちらかに当てはまる人は必見
ストーリー | |
映像 | |
キャラクター | |
メディアミックス | |
総合評価 80点 |
【あらすじ】これは異世界から受け継いだ輝かしい名前と競走能力を持つ“ウマ娘”が遠い昔から人類と共存してきた世界の物語。シンボリルドルフに憧れ、無敗の三冠ウマ娘を目指すトウカイテイオーと、名家の誇りにかけて、天皇賞連覇に挑むメジロマックイーン。二人はライバルとして、親友として、お互いの夢をかけて<トゥインクル・シリーズ>を走り続ける!
(「公式」より)
昨今話題の「ウマ娘」。
ゲームやアニメ、漫画などのメディアミックスを目的に作られたコンテンツであり、どこかしらで目にした方も多いかもしれません。
ざっくり内容を説明すると「競馬×美少女」。
伝説の競走馬が美少女として生まれ変わり、実在したレースや物語を追体験していく、擬人化ストーリー。
3月までアニメの第二期が公開されており、またスマホゲームのクオリティでも注目され、飛ぶ鳥を落とす勢いで人気が彷彿している作品です。
所詮は美少女物と敬遠される方も多いでしょうが、本質はそこではありません。
「競馬」を題材にした「スポ根」です。
はい、全く同じ系統の大ヒットアニメに「ガールズ&パンツァー(以後:ガルパン)」という、実際の戦車を美少女達が扱いバトルするスポ根アニメがあり、これと酷似する作品です。
↓これ
「ガルパンおじさん\(^o^)/」という言葉ができるほど、戦車マニアのおじさん達を惹き付け、映画も継続公開中です。(映画館はオッサンだらけです。横浜の初日に行くと海兵さんとか観に来てます)
ウマ娘でも同じ現象が起きています。
競馬おじさん\(^o^)/ 達がこぞってウマ娘YouTubeに参戦中です。
ガルパン公開時は乗り遅れて参加できなかったので、今回は乗ってみようかと思い感想をしたためます。
正直、ガルパンより完成度が高いと思っています。
完成度というより、既存シェアと現況のメディア媒体に合っているのでしょう。
その点をまず、構成から見て行きます。
構成
ガルパンにしろウマ娘にしろ、なぜ「美少女なのか?」という疑念が沸く方へ補足しておきます。
理由はいくつか挙げられます。
①オッサンが戦車動かしたり、オッサンが馬に乗っている絵よりも、美少女の方が映えるから。
②戦車を動かすからと言って「戦争」を書きたい分けではないし、競馬が題材になっているからといって「賭け事」を書きたい分けでもなく、これらの連想を薄めたいから。
③マニアックな知識を書く為には、表層で和らげてバランスを取る必要があるから。
大きくはこの三つです。細かく述べればもっとあります。
敬遠される多くの方は①に着目しているのではないでしょうか?
明白な販売意図が目ざわりに映っているかもしれません。勿論、販売側にはこの意図もあるはずです。アニメやゲームはボランティア目的では無く営利目的ですので、思惑は当然にあります。
只、漠然と美少女を書いて無条件に利益が出るはずもなく、これがある必然性を求められます。
本作やガルパンにおいては、むしろ、②、③の方が極めて重要であり、売れた理由は「美少女」ではなく、マニアックな情報と観やすい構図です。
例えば、本作「ウマ娘」のレースシーンは、ほぼ実レース通りです。他にも些細なキャラクターの行動にも、実話の競走馬の癖や逸話がモチーフになっています。
実在レースの情報を得る。実話のモチーフを探し出す。只々アニメを観る以外の付加価値があり、これによって普段はアニメを観ない人も作品へ誘導する処置が取られています。
↑はあくまで営業戦略での話ですが、作品の色付けにも利用されています。
本作シーズン1、2とありますが、特筆すべきはシーズン2の1話目、ラストの引きです。ここ数年みた作品で、最も優れていると言い切ってしまいたいくらい見事な引きでした。
※「引き」とは、物語の次のシーン、次の回へ視聴者を引き込む為のラストの仕掛けです。
軽く内容を話すと……
トウカイテイオーは父シンボリルドルフの栄光もあり、出生時から期待されていた。その周囲の期待通りに「皐月賞」「日本ダービー」を無敗で制覇する。父、ルドルフの達成した無敗の三冠馬へ王手をかける……のだが、ここからトウカイテイオーの苦難が始まる。
というのは、名馬トウカイテイオーの実話です。
これをどう表現したのか?
ウマ娘では、最後に勝利したウマ娘がステージでダンスライブを行います。ノリノリで歌い、踊るトウカイテイオー。
その足首にカメラが焦点を合わせる。
同時に、トレーナー(調教師)、シンボリルドルフが目を見開き唖然とする。
そして題字。
「トウカイテイオー」
これだけです。(実際には劇中3度、同じ足首にカメラが当てられています)
(ᐡ ; ﻌ ;ᐡ )ナイチャウ
台詞なんか一切ありません。トウカイテイオーは元気そうに踊っています。
でも我々は既に知っています。トウカイテイオーが、なぜ、歴代の競走馬の中でも随一の人気を誇っているのかを。
度重なる骨折により、幾度もレースを諦め、その度に引退の文字を過らせながらも、何度も立ち上がった不屈のヒーローなのだと!
そして、あの……伝説の有馬記念。(もう絶対に最終話がこれだと分かります)
物語の良し悪しは「最序盤に、この物語がどこに向かうのかを提示できるか」に全てが掛かっています。
ウマ娘2期の1話目において、問答無用に、カメラの抜きと周囲の人間の表情、そして名前という文字だけで、物語の全貌を説明します。
素晴らしい演出です。
無駄が一切ないです。因みに、この間「12秒」です。
この12秒で、泣いちゃいました。トウカイテイオーの有馬記念が何度もフラッシュバックして、今観ても耐えられません。
さてここで、「それって事前情報ありきの演出じゃない?」と思われるはずです。
そうです。その通りです。
知っている人は感動します。
知らない人はどうでしょうか?
これが先に上げた③が「売れた理由」と申し上げるポイントです。
知らない人は、「そういうマニア向けスタンスで作られている作品」だと知る事になります。
つまり、制作陣の意向を示しているのです。
という提示です。(まぁ、これがシーズン1だと、こうはしなかったでしょうが……)
構成が上手いというのは、こういう事なんです。
美少女物が観たいだけの一部層だけではなく、「競馬ファンにも訴えかけるよ!」というアプローチをちゃんと提示するのです。
同時に、「競馬とか全然知らないけどアニメなら観てみようか」層も引き込みます。
そして、実際に内容が進行すると、実体としては「スポ根」。
アニメという娯楽のテンポを崩さず、かつマニア向けの情報も欠かさず、美少女物としてのキャラクター芸もある。
それもこれも、1話目の出来きの良さが原因です。
構成②
物語の王道は「苦難」です。
むしろ、苦難以外で物語を作る方法なんか存在しない! と言い切ってしまいたいくらい、物語=苦難です。
ですが、昨今は事情が変化しつつあります。
只々ノンストレスで、単純で、読みやすい作品で溢れかえっています。
今は無料で見られる動画媒体なんて腐るほどありますので、ストレスのある作品なんか面倒くさくて観ていられないのでしょう。
そんな時勢において、本作は真っ向から立ち向かいました。
苦難だらけです。
この2期はメインパーソンが3人いて、トウカイテイオー、メジロマックイーン、ライスシャワー。実年表だと91~93年期の主役達です。
三人全員に、苦難が圧し掛かります。そして、全員が立ち向かいます。13話の尺では一人の苦難すらも書かない無い現代において、三人分の苦難をぶち込みました。
ストレスフリー万歳! の時代にこれを実行しようとするのは危険なのです。
でも入れる!
だって、それが競馬だから!
他のスポーツもそうですが、競馬も「怪我との闘い」が実際のレースよりも重要であり、更に競馬の怪我は「予後不良(安楽死)」に直結する場合も多いです。(1期のサイレンススズカ、今期のライスシャワーは予後不良です)
怪我以外にも様々なドラマがあり、賭け事としてではなくスポーツとして観戦する方が多いのも、競馬が廃れない大きな理由です。
これを書かないのであれば「競馬」を書いているとは言えない!
そんな気概が汲み取れます。
同時に、制作サイドの競馬への愛も伝わります。
今は苦難(ストレス)を拒否する作品が主流ですが、そんな苦難に立ち向かってこそ競馬を書いている意味にもなるのですね。
正直、競馬って権利関係の分厚い壁があるので、このくらいの気概が無いと乗り越えられないでしょうし、これがあったからこそ魂の籠ったムーブメントを起こしていると思います。
こんなに魂の入った作品、そこにブームがついてくる作品はそうそう出ないので、観るかどうか迷っている方は、今すぐブームに乗っかって欲しいです。
こういうのは、乗らないと損です。
↓要望
三期があるかは知りませんが、できればBNWを掘り下げて欲しいです。(OVAでもやったしゲームでもあったので、無いかな……実馬のナリタブライアンが大好きなんで、絡ませて欲しい。もしくはタマモクロスが好きなのでオグリキャップのシリーズでもOK。もしくはディープ実装して欲しい……金子さんお願いします!お願いします!
ーーー 追記 ーーー
普通に、今漫画の方でオグリVSタマモクロスやってました。やっぱりタマモクロス好きや
尚、個人的に2期で一番好きなウマ娘は「トウカイテイオー」ですが(リアルでも好き)、実馬も含めてナイスネイチャが好きです。ナイスネイチャ、まだ生きてますよ!(21年5月現在)
競馬を賭け事ではなく、ファンの付くエンターテイメントにした名馬の一頭がナイスネイチャだと強く思っております。
会えるうちに会っておきたい名馬です。